平成21年12月中旬の記事




12月20日

COP15、合意文書を承認するという形を作って終了しましたが、実質的には後進国への資金援助が決まっただけのように見えます。産経社説は「「金儲け」という視点で見詰めると、混乱の背景が焦点を結んで見えてくる。温暖化防止の「手段」であるべき資金の獲得が「目的」に転じてしまった国が少なくないのではないか。」と指摘しています。

鳩山首相は、会議参加前に110億ドルの拠出をいち早く表明し、会議を主導したいと意欲を示していましたが、結果は惨めで影が薄かったと報じられています。110億ドルと言えば、湾岸戦争の時の拠出金額とほぼ同額の巨大な金額、その支払いのため、当時の政府は特別税まで設けたのです。

この会議での日本の役割は米国と協調して会議を主導することに狙いはありましたが、普天間問題でオバマ大統領の鳩山不信は強く、まともな話もできない状態では日米協調など望むべくもありませんでした。

一方の主役は中国です。スーダンが途上国を代表して先進国批判を強烈に続け、会議を混迷に陥れました。スーダンがダルフール紛争で国際的な批判を受ける中、中国から経済的或いは軍事的支援を受けていることの恩返しとばかり、ここぞと中国の影武者として行動していたのです。

その活動を後ろから支えるのがアフリカ諸国です。11月にエジプトで中国がアフリカ諸国の首脳を集て行った「中国アフリカ協力フォーラム」で、温家宝首相は100億ドルの低利融資をアフリカ諸国に提供する方針であると述べていました。昨年日本が主催して横浜で行われた「アフリカ開発会議」の成果など、何処へも見えない状況は悲しいものです。

協力するべき国との関係を悪化させたまま会議に臨んだ日本の首相と、しっかり根回しして途上国のリーダー役を演じた中国の首相では、最初から勝負がついています。更に、拠出金額というカードを最初から見せて会議に臨むとは、交渉術としても最低です。首相には友愛精神だけではことはうまく運ばないことを、今回の会議でしっかり認識できたことを期待したいのですが、また他人のせいにするのでしょう。


12月19日

今朝の産経は、イラクやアフガンで米軍が使っている無人偵察機(ドローン)の送信して来る映像が、武装勢力に傍受されているとのウォール・ストリート・ジャーナルの報道を伝えています。

事はかなり深刻です。イラクでの事象は産経が伝えるとおり、武装勢力がドローンの映像を傍受、安価のソフトで映像を利用しているのに対し、米軍側はその対策ができずにいる模様です。このような傍受活動は04年頃から仮想敵、例えばロシアや中国に傍受される危険性に対し警告されていたとのですが、対策は後回しになっていたのです。

この報道を受けて、ペンタゴンは既にこの問題は解決されていると17日の記者会見で述べていますが、どの程度改善されたのでしょうか。

軍事で、ドローンやヘリから電送されるビデオ電送システムは民間でも広く使われる技術であり、現在の米軍のシステムでは暗号化はされていないとのこと、このシステムを製造している会社では、暗号化の技術は開発中とのコメントもありました。

ペンタゴンの恐れるところは、技術的に優れた敵が傍受したビデオなどを加工し、それを味方の司令部などにドローンの映像として送り込んでくることによって、情報操作をされることだと関係将校の証言がありました。IT時代になって、センサーから得る情報の信憑性も検証が必要になってきました。


12月18日

今日は寒い中、空自OBの方々とゴルフをやって来ましたが、話題は民主党政権の悪口ばかり、皆が頭に来ていると言います。普天間移設問題のような安全保障上の問題だけでなく、民主党政権発足以降の政策全般について、OB達の評価はとても低いのです。中には鳩山、小沢の顔を見るのも嫌になったと言う人もおります。

14日頃に行われた各社の世論調査によれば、内閣支持率は低下してきたとは言え、50%内外を示すものが多くなっています。各々の政策についての評価は低いものの、政権全般についての支持率5割は、最近数代の自民党政権と比較しても、決して低いとは言えません。

OBを含めた自衛官達に民主党政権を支持するかと問えば、恐らくは8割方、いや全員が不支持だろうと思います。世論とのこのギャップが生ずる理由は奈辺にあるのでしょうか。恐らくは、安全保障という国家が最も重視しなければならない事に対する民主党政権の危機感のなさを私どもは感じとり、日本の先行きに危機感を抱いたからに相違ありません。


12月17日

内閣が決め兼ねていた予算編成を小沢幹事長が仕切りに入り、一刀両断すべて解決して見せました。選挙前のマニフェストなど何するものぞ、来年の参院選をにらんでの政治判断だそうで、票になりそうな政策はしっかり確保しての申し入れです。内閣がしっかり仕事をしていれば、幹事長にそうこう言われる筋合いはない筈、そもそも幹事長は党務に専念する役割分担だと内閣発足時に決められていたのです。

産経によれば、党側の申し入れの会議の席上で「幹事長は首相や菅直人副総理・国家戦略担当相らを厳しく叱責した。」のだそうです。民主党政権下では幹事長は内閣の上に立つ地位にあるらしい、予算編成で幹事長に仕分けされても従うしかありません。

これに対する内閣側の反応は情けない、首相も官房長官も小沢氏の申し入れは国民からの申し入れだと認識する、とは何と言う言い方でしょうか。おまけに、この申し入れを「ありがたい」と何度も礼を述べたのだそうです。

今朝の朝日は社説で「天皇会見問題 政治主導をはき違えるな」との表題で「政治主導だからと、これまでの積み重ねを無視して好きに憲法解釈をできるわけではない。まして高圧的な物言いで官僚を萎縮させ、黙らせるのは論外だ。」と書いています。珍しく、いいことを言ってくれました。

週刊新潮の今週号は「小沢天皇の傲岸」、週間文春は「小沢と鳩山は天皇に土下座して謝れ」と書いていますが、天皇陛下は内閣の思い通りに動かせるのだとの思い上がりが小沢発言には見えます。内閣を仕切っている幹事長には、今は中国しか見えていない模様ですが、陛下に対する不敬とも言うべき言動は、日本人のDNAに響くところがあるのです。


12月16日

「何も決めない、先送り」という政府方針を打ち出し、普天間移設は来年へ解決を持ち越しました。この方針で先行きが見通されれば良いのですが、お先真っ暗とはこのこと、普天間基地の移設は白紙撤回に等しくなりました。社民党は移設反対の住民の声を聞き、強硬に国外県外移設を言い続けたと見たのは僻目か! 基本政策閣僚委員会が終わった後の福島社民党党首のしてやったりという笑顔をみると、何としても辺野古移転は阻止し、普天間を維持するという意気込みが見えたように思えました。

その様な偏見をもってに書いてもおかしくない様な振る舞いを社民党は行い、鳩山政権もこれに同調しました。先送りが移設の白紙撤回と同意語であることくらいは、政治家であれば、十分承知の上のことに違いないのです。

日中友好と日米同盟のどちらが大切か、対アジア外交で米国を外して日本が対応できるのか、その答えをいみじくも民主党山岡国対委員長が上海での講演で言っています。「先ず日中固め、対米問題解決」だそうです。こんな考え方を持つ人が政権政党の指導的立場にいるのです。

鳩山首相も度々言明しているように日米同盟が大事だと言うなら、そして、壊れかけた日米同盟を修復したいなら、小沢幹事長に先の訪中団の規模を上回る千人規模のデレゲーションの組織をお願いし、ホワイトハウスでオバマ大統領と新人議員とがツーショットを撮って頂く程の意気込みでやらなくてはなりません。本欄も最近皮肉っぽくなりました。真面目に評価するのが馬鹿らしくなってしまったのです。


12月13日

昨夜、苫小牧港の外防波堤でプレジャー・ボートが沈没、自衛官5人が死亡、1人が行方不明となった事故が発生しました。不幸な事故ですが、同じような事故が以前にあったような記憶がありました。02年9月に北海道サロマ湖でのプレジャーボートの転覆で自衛官7名が死亡した事故です。

ネットで検索してみますと、次のようなブログがありました。北海道旅行でサロマ湖に行った人が「そこは自衛隊の前線基地の様相。自衛隊のヘリは離着陸を繰り返し、自衛隊の車だらけ、海岸線には自衛隊員が双眼鏡で沖を監視している。」と書いています。恐らく、苫小牧も同じような状況が生じていたのでしょう。

同僚の自衛官たちが連れ立って海釣りに行くのを咎め立てする気はありませんが、安全には人一倍気をつけるのが自衛官の務めです。まして、現場が立ち入り禁止となっている防波堤であり、定員オーバーが乗船していたと言うことですから、遵法精神も問われます。今回の事故のニュースを聞いて、何ともやりきれない思いをしたのは現役、OBを問わず自衛官達の共通するところでしょう。


12月12日

防衛大名誉教授 佐瀬昌盛氏が産経の正論大賞を受賞しました。お祝いを申し上げます。佐瀬氏は74歳、防大1期と同年代です。受賞に当たっての所見で「わが国の現役政治指導者を含めて時代の走者、伴走者を見ていると、その走り方は違うんじゃないのと物申したくなる衝動に駆られることも多くなった。」と述べていますが、その気持ちは数年を後走する小欄も共有するものです。

更に佐瀬氏の「その点に目ざとくなるのは、平均値として言えば、同時代伴走者たることを断念した高齢者の方だろう。そう考えると、高齢の執筆者とて、役割がないわけではあるまい。俗に言う後衛の役割である。」との所見は、同世代で同時代を走る私どもに、何らかの社会への役割を示されたような気がします。

戦後の自民党政権時代を通じて、日本のよき伝統が次第に崩されてきた状況を見て来ましたが、ここに来て民主党政権が誕生し、その傾向が一挙に進んでいると感じられます。民主党という名前とは裏腹に独裁的な傾向が一面で強まっています。慣例を無視して天皇と中国副主席との会見を設定し、これは政治的なものではないと強弁するとは、独りよがりも極まりました。

首相は、これは小沢幹事長の要請ではないと言いましたが、状況から言えば明らかな虚言です。例え小沢氏が口で言わなくても、今の時点で中国政府から要請されたとあれば、小沢氏の影響力が働いたのは明らかです。

佐瀬氏のいう後衛の役割をどう果たすか、本欄も多少の貢献をしたいと思って始めたのではありますが、兼好法師の「おぼしき事言わぬは腹ふくるるわざ」の言葉とおり、腹をへこますためにやっているようで気が引けてなりません。おぼしきことを言い立てるのは心理学的には外面化などと言い、自己防衛のメカニズムだそうです。これでは何か書き立てても自己満足にか過ぎず、到底後衛の役割は果たせません。


12月11日

民主党小沢幹事長率いる国会議員140人を含む630人の大デレゲーションが、北京の人民大会堂を埋め、議員全員が胡錦濤主席と握手、またツーショット写真撮影という大歓待を受けました。小沢・胡錦濤会談で小沢氏は胡錦濤主席に向かって自らを野戦軍司令官と言いました。何時人民解放軍在日野戦軍司令官の辞令を受けたのか知りませんが、主席は敢えて否定せずにこにこしていましたから、事前に辞令交付があったのでしょう。

先般の鳩山首相とオバマ大統領の首脳会談について、産経古森記者がこの会談は首脳会談で必ず行われる二人が差し向かいでの会談が行われず、陪席者がいた会談であったと報じています。一国の首相が初の訪米であったのではありますが、オバマ大統領にして見れば、気に入らないVIPに対し、精一杯接遇したつもりだったのでしょう。

鳩山首相はCOP15の機会をとらえ、オバマ大統領との会談を模索していましたが、報道官から「この前に会ったばかりだから、話すことはない」ときっぱりと断られました。これを聞いてか鳩山首相、「正式に会談という段階でもない。」と言いました。イソップの葡萄と狐の寓話を思わせます。

政権政党の幹事長が訪中し、大歓迎を受ける一方で、日本政府のトップが訪米して冷遇される、冷遇した方は同盟国であり、歓迎した方は価値観を共有しない共産主義国です。これを見れば、日本政府が本当のところどちらの陣営に属するのか、誰しも明らかと思うでしょう。