平成20年7月上旬の記事




7月10日
イランは9日、射程2000kmのシャハブ3を含む9発のミサイル発射演習を行い、革命防衛隊は、この演習はイスラエルの対イラン原子力施設空爆演習への措置だと言明しました。

6月半ばにイスラエル軍が地中海沖900マイルで戦闘機等100機による大演習を行いました。この演習に参加した戦闘機の行動半径内にイランの核施設があり、演習は明らかにイランを念頭に置いたものだったと米高官がリークしています。米高官のリークが意味するところは明瞭です。米国は空爆に反対なのです。

イスラエルは1981年、イラクのオシラク原子力施設空爆、昨年にはシリアの施設を空爆するなど、今ある危機にはあらゆる手段を用いて対処することを示してきました。今回のイランの原子力開発について、イスラエルはどう対処するのか、ウォール・ストリート・ジャーナル6月23日付社説は、イランの核開発に対して欧米が「宥和」政策を続けてきたため、イスラエルはイランの核施設を自ら攻撃するしかない局面に追い込まれつつある、と論じています。

オシラク攻撃と比べると、イラク原子力施設攻撃は軍事的にも極めて困難なものと思えます。イランはもし攻撃があればホルムズ海峡を封鎖し、イスラエルと米軍基地を攻撃すると言っています。もしホルムズ海峡が封鎖されれば大変な事、原油価格は狂乱的な状況に陥るでしょう。

イスラエルの演習、イラクのミサイル発射と続く双方の動きは、どのように見れば良いのでしょうか。イスラエルにとってイランの原子爆弾保有は国家存亡の危機、イラク、シリアへの攻撃という従来の例に倣って実行するしかないと思っても当然です。しかし、これが第5次中東戦争へ発展することも視野に入れなければならないとすれば、中東の石油に依存する世界中の国々はイスラエル非難に回るでしょう。

オシラク原子炉爆撃を描いた本、「イラク原子炉攻撃」を防大2期の高沢市郎氏が翻訳・出版されていますが、同書には攻撃前の様々な内外の政治的情勢、或いはイスラエル空軍の状況が描かれ、攻撃が容易には行えなかったことが書かれています。また、私はこの攻撃が冷静かつ着実に行われたと想像していましたが、実際には極めて人間的な要素が加わった危うい部分があったのです。

イスラエルとて鉄の意志をもった人達の集まりではありません。今、実行派と反対派が相剋を重ねていると思います。

7月9日
G8宣言が発表され、日本もなんとか体面を保つ程の成果を挙げることができたように思いますが、G8の力の限界も見えました。3Fと呼ばれるFUEL,FOOD,FINACEについては、懸念こそ示されましたが、具体的な策はありませんでした。

今日は中国、インドなど新興国を入れての会議が行われます。G8で合意した温室ガス規制に新興国がどう反応するかが焦点ですが、特に中国の出方が気になります。

この会議に出席する胡錦濤主席はどのような気持ちで出てきたのか、G8諸国からかなりの圧力を掛けられることを予測してのことでしょう。今や米国と並ぶ温室ガス排出国です。国際会議で俺の所はまだその状況にないとそっぽを向くことは出来ませんし、国内向けには経済成長のために頑張っているという姿勢を見せなければなりません。

更に、西側諸国から軍事費の透明化を要求されていますから、これも外向けと内向け双方の姿勢に矛盾があります。胡錦濤主席、さぞや気の重いサミット参加と思えます。

主席にとってこの際頼りになるのが新興工業国、特にインドです。インドと協調してG8諸国に長期目標として温室ガスの80〜95%削減を求めるのだそうです。福田提案の50%削減を大幅に上回る提案ですし、数値そのものが非現実的ですが、そんな事は意に介しません。

中国にとって、温暖化問題は未だ先の事、環境汚染の方がよほど直面する重大な問題になっています。そして、外国に対し、特にG8諸国に対し強い中国をアピールすることが内政の安定に重要です。その意味で、今回のサミットに参加し、存在感を示すことが胡錦濤主席の責務と言えましょう。


7月8日
洞爺湖サミットが始まりましたが、初日は霧の中で自慢の景色は見えませんでした。英紙フィナンシャル・タイムズは「姿が見えない」と今回のサミットにおける日本の姿を評していると報じられています。この英紙のエッセーはなかなか読ませるものと思いますので、次のURLを参照下さい。
http://news.goo.ne.jp/article/ft/politics/ft-20080706-01.html

このエッセーの最後に「今のところ日本は、指針を失った国のように見える。上であげてきた選択肢のどれを選ぶにしても、まず自らがどういう国なのか、アイデンティティについて決断する必要がある。」と書かれています。

顧みますと戦後60年、日本は世界に認められる独自のアイデンティティを示したことなど無かったと言えましょう。それが戦後の日本人のアイデンティティだったのだと考えた方が良いと私は思います。福田首相は5月に「太平洋が『内海』となる日へ」と題された演説を行いましたが、今朝の産経正論で桜田淳氏はこれを高く評価しています。しかし、フィナンシャルタイムス紙は「世界地図のページを無理やりめくり、丸は四角だと言いくるめようとしたわけだ」とこき下ろしています。

フィナンシャルタイム紙の考え方は西欧の思考そのものですから、国家はかくあるべしという考えに満ちています。しかし、日本はこのアイデンティティの欠けた姿を半世紀以上も世界に晒しながらも、世界第二位の経済力を身につけるに至りました。少々はこき下ろされても自信を持たなければなりません。

自衛隊佐官級の訪中団が歓待されていると報じられています。最近、中国が対日関係の改善に努めているのも、日本の地位や役割を認識せざるを得ないからでしょう。韓国紙は「脱炭素で日本企業にチャンス」という記事で、日本の高度の技術力が今新たな機会を得ていると書いています。

「姿が見えない」「顔が見えない」など言われても、それはその陰に存在感があるからこその話、顔だけ出して大声で他国へ干渉したり、支援を受けようとする国よりよほどマシではないでしょうか。


7月7日
今朝の産経に、石原慎太郎氏の「日本よ」が載っています。冒頭で石原氏は「今、人類は実は画期的な危機に瀕しているといえるのかもしれない。」と述べ、複合的な危機が世界を覆っており、「その元凶はアメリカが主唱する市場原理主義だ」と喝破しています。

最近の値上げ攻勢に世界各地で抵抗の声が上がっていますが、日本ではまだ危機感が少ないように感じられます。漁船の1日出漁中止、主婦の値上げ抗議活動などが目立つ程度、ガソリンがリッター180円台になっても走る車の数が減ったという実感はありません。

各国のガソリン価格を見ますと、欧州各国ではほぼ200円を超え、ドイツでは240円になっています。最高値はシェラレオネの500円は例外的ではありますが、中国では115円程、韓国も200円を超え、日本の180円は特別高いものではありません。所得水準を考慮すれば、運送業界などを除けば日本はまだ支出に余力があるのかも知れません。

110円台に上昇した米国では、ロサンゼルスで高値の影響で朝晩の渋滞が減っているという報道がありますが、他の諸国と比べればまだ安値圏、このように比較すると先進国と開発途上国の間には、ガソリン高騰に対する抵抗力の面でも格差が広がっていることが分かります。

石原氏の言う「米国発の市場原理至上主義」によって、投機資金が原油、農産物の価格をつり上げましたが、世界を駆けめぐる投機資金の25%は日本発のものと言われます。我々年金生活者の乏しい貯金や年金資金も九牛の一毛かも知れませんが、投機資金の一翼を担って自分の首を締めることになっているとは、更には、開発途上国の貧しい人達の食い扶持まで奪うことになっているとは、何をか言わんやです。

7月6日
中川秀直元幹事長らのグループが、今後50年間で日本の総人口の10%(約1,000万人)の移民を誘致する数値目標を掲げ、「多民族共生国家」への道筋をつけるという政策提言を先月末に行いました。直感として、眉に唾を付けたくなるような提言と感じましたし、クライン孝子さんが先月24日の産経正論に「自民議連の移民誘致プラン反対」という論を掲載し、反対を表明しました。

少子化が進み、日本人の人口は既にピークを過ぎ、今後急激に人口減が進むと予想されています。それを外国人移民によって補うことの可否は、一筋縄では行かない問題を含んでいます。

クライン孝子さんは、日本独自の文化を守り、日本溶解を防き、更にドイツの轍を踏むなと言って、中川提言を非難しています。私も人口減の中で調和を図り、それなりの社会を建設するのが大切であり、人口7,000万人の時代が来ても、やり方によっては人間がひしめき合っている今より快適な生活が送れる様になるのではないかと考えます。しかし、これは理想論なのかも知れません。

外国人労働者が多い町には、群馬県太田市や岐阜県美濃加茂市がありますが、美濃加茂市では20代の労働者の4人に1人が外国人だそうです。OECDの推計によれば、日本が今の労働人口を維持しようと思えば、年間50万人の外国人を受け入れる必要があるとのことです。既に外国人労働者なしでは経営が成り立たないメーカーは枚挙に暇がありません。

自動車メーカーのスズキの会長は、「最低限度の労働力を受け入れなければ、工場の海外進出が増える。日本人の雇用もなくなる。ものづくりの問題ではなくて、日本の国家がどうなるかという問題だ。」と警告していると朝日は報道しています。

高齢化が進み、益々若年の労働層が減る中、日本文化と民族の独自性を守れと耳障りの良い言葉だけでは問題は解決しないのは確かです。或いは、縮小再生産体制で維持可能な低水準の生活を営むことを覚悟すれば、何とかなるような気もします。何か正しいのか、推移を漠然と見ているだけでは済みません。ずるずる現状に引きずられて、引き返し不可能点に達してしまっては遅いのです。今は、何らかの政治的決断をしないとならない時期ではあります。


7月5日
給料は上がらないのに、諸物価値上がりで、庶民の暮らしは1ランク下げなければならない状況に陥っています。特に今回は経済活動の根本であるエネルギー源としての原油値上がりですから、原油を必要とするあらゆる分野の値上げとなりました。農業を取り上げてみても、油なしでは何もできないのが現状です。勿論漁業も然り、第一次産業が軒並みやられては、人間の生きる根幹が揺れているのです。

田舎で町医者をやっている義弟が言っていましたが、例の後期高齢者医療保険制度が発足してから、お年寄りがばったりと外来に来なくなったとのことです。以前と比べて、受診に掛かる医療費が特別に高くなった筈もないのですが、医療制度改正の内容を理解するのが難しい高齢の人達にとって、あれだけマスコミに報道されると、どんな高額の診療費を取られるのかと恐怖が先に立つようです。

物価値上がり医療制度改正と、田舎の老齢者達には生活防衛に必死にならざるを得ない状況が次々と起こり、風評被害とも言うべき状況までが起きています。

今、政治が出来る事は限定されているかも知れませんが、その中でも必死で物価値上がりや医療などに取り組んでいるという姿勢を見せなければ、庶民に少しの心の安心も与えられません。


7月4日


7月3日
サミットを前に、ロシアのメドベージェフ大統領がG8の主要紙と記者会見、日本からは朝日の記者が参加しました。対日関係では領土問題への言及があり、今朝の朝日はトップニュースとして「領土・解決にチャンス」という見出しで扱っています。

領土に関するメドベージェフ大統領の発言は、「過去の諸宣言に基づいて協議し、前進するべきだ。」、「我々はまず、この状況を派手に騒ぎ立てるべきではない。我々は、前進しなければならないし、このテーマについて以前に決まった宣言に沿って議論しなければならないし、短期間で最大の結果を得ようとするべきではない。」と極めて慎重なものです。

これをもって、朝日がいう解決にチャンスと見るのは早計に思えますが、プーチン氏が領土問題ではけんもほろろの態度であったのと比べると一味違って見えますが、メドベージェフ氏の狙いはどこにあるのでしょうか。

プーチン首相の傀儡と言われるメドベージェフ氏については、今朝の産経正論に拓殖大の木村客員教授が「新大統領がプーチン前大統領とは異なる内外路線をとるかもしれないとの期待があるからだろう。無い物ねだりに等しい幻想である。」とまでこき下ろしています。新大統領にとって、プーチン首相のコントロール下にあると内外から思われるのは人間として屈辱でありましょう。

既にロシアの大統領府と首相府間に権限の境界をめぐって確執が始まっていると言われます。従来のやり方では、首相は経済・社会政策を担当し、大統領は外交、防衛、治安政策を担当していると言われ、かつ諜報機関は大統領に直属しています。この権限の境界を見れば、ロシアの権限の源泉である諜報機関は大統領にありますが、KGB出身のプーチン氏がこれを手放したとは思えませんし、メドベージェフ氏がこの強力な力の入手を欲しても不思議ではありません。

プーチン・メドベージェフ枢軸は時と共に崩れて行くのが人間関係の常道と見るべきだと、私は思っています。


7月2日
7日に開幕する洞爺湖サミットについて、今になって論議が盛んになってきました。取り上げる議題を何にするかという問題は勿論ですが、参加するメンバーについても意見は分かれています。特に、今回は参加メンバーは正式メンバーのG8に加え、ブラジル、インド、中国、韓国、アフリカ諸国などが招待され、全部で何カ国が参加するのか数えられないような状況です。

サミットが始まった頃は冷戦真っ只中、参加国も日・米・英・独・仏・伊の六カ国で、西側をリードする国々の首脳でした。その後カナダ、オランダとEUが加わりましたが、西側諸国のサミットという意味合いには変化がありませんでした。ところが97年からは露が加わったことで、サミットの性格が変わりました。

今回、仏のサルコジ大統領は、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの5カ国をサミットの正式メンバーにすることを提案しています。これらの諸国が加われば、いよいよサミットが開始された当初の理念は遠ざかってしまうことになります。それだけ、世界が多極化して当初のサミット参加国の影響力だけでは世界をリードして行けない状況になったものと思えます。

今回招待された国々では、アフリカ諸国が多数あり、それを誰が仕掛けたのか気になります。その国々とは、アルジェリア、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、タンザニア及びアフリカ連合(AU)委員長です。

5月に横浜で開かれた第4回アフリカ開発会議がその伏線になっているものと思いますが、先の国連安保常任理事国入りでアフリカ諸国の支持を得られず、苦い敗退を喫した日本としてはこの機会に対アフリカ関係を改善して置きたいと言う願いが見えています。また、地下資源豊富なアフリカ諸国への中国の進出をここでくい止めたいということもありました。

サミットの場に何故アフリカ諸国が参加するのか、この異例とも言うべき極めて戦略的な外交政策を誰が発想したのか、政府に戦略家が存在するように思えます。


7月1日
拉致問題で、米大統領の「忘れない」という言葉に一縷の望みをつなぐ被害者家族達ですが、今朝の産経「政策探求」に、「忘れない」というのは男女間の別れの言葉だとベテラン記者の言葉が届いたと書かれています。そして「これは「ど演歌」の世界であり、これを国際政治を支配する米大統領に演じられてしまった。日本政治は「捨てられた女」そのものということになる。」と続いています。

今朝の朝日「声」欄に「米国頼みやめ、拉致解決せよ」という意見が載っています。他力本願で問題が解決する筈もない、日本は泣き言とグチはやめて、自力で解決するべきだという意見です。この投書主は八百屋さん、市井の人達もそのように感じ始めているのです。外交力に自信がない日本が外圧に頼る気持ちは分かりますが、その北朝鮮に向けられた米外圧の強さは極めて弱化していることに気付かなければなりません。

「政策探求」には洞爺湖サミットで顔を合わせる福田首相とブッシュ大統領の間には「別れた男女が久しぶりに邂逅したときのような、よそよそしさがにじむのではないか」と書かれています。

ブッシュ氏の「別れ言葉」の裏には、自らの力の衰えによって北朝鮮に譲歩せざるを得なくなったことを見せたくない意識があるでしょうし、福田氏には海自艦艇のインド洋派遣や集団的自衛権提言の棚上げなどで、対米協調が満足に行っていない非力政権の意識が潜在しているでしょう。どちらも言いたくない状況を陰に持ってのサミットでの顔合わせです。



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