平成20年6月下旬の記事




6月30日
今朝はニュースが少なく、取り上げたい話題がありません。閑話休題、今朝はサントリーが各紙に全面を使った広告を出し、三浦雄一郎氏のエベレスト登頂時の写真が掲載されています。広告によれば、三浦氏はごまから抽出したサントリー製セサミンを飲んで75歳で再登頂に成功できたのだそうです。

三浦氏を支えた登山家の中に村口徳行氏がいます。今回の三浦隊の登攀リーダーで、エベレスト登頂4回目というベテラン、前回の三浦氏の70歳の時の遠征にも同行していました。

村口氏と言えば、1987年の防衛大山岳会のチョモランマ遠征に撮影隊として同行した経歴があることを思い出しました。同登山隊は西陵からの秋季初登頂を狙ったのですが、悪天候と隊員が遭難死する事故が起こったため、8千メートルを超えましたが登頂は成りませんでした。

この撮影隊は、標高6,000mを超える高所で、ユキヒョウの撮影に成功したと報告しています。この標高は氷雪の世界、食物がある筈もありませんが、何故か動物がいたのです。

ヒマラヤでは沢山の謎があります。「山がそこにあるからだ」との言葉で有名なマロリーの遺体が1999年に発見されましたが、彼が登頂に成功したかどうかは未解明のままです。雪男(イェティ)の存在もその一つですが、姿を見たとか足跡を発見したとか、目撃証言は結構沢山ありますが、確認はされていません。

それにしても、エベレスト登山に向かった人達の9%が遭難死しているという統計があります。11人に1人が死んでいるのです。このような危険なところへ向かう人の気が知れないと、古希を過ぎたせいか山岳部出身の私でさえも思います。三浦氏は80歳で再々挑戦すると言っていますが、人間の心理こそが最も謎なのかも知れません。


6月29日
米国産牛肉輸入問題で、韓国李明博大統領が苦境に立たされています。得意とする経済分野でも原油高などの影響もあって停滞し、支持率は低下する一方です。保守層の支持を得て大統領に就任し、対日政策も前政権とは一線を画して正常化を歩んでいるだけに、立ち直りを期待したいと思います。

韓国民の対日感情は優越感、劣等感、被害者意識などがないまぜになり、複雑です。最近の韓国紙電子版の報道を拾い読みしてみますと、次の様な記事が目につきました。

*「技術や価格の面での競争力の差が、韓日間では広がり続ける一方、韓中間では急速に縮まるという“サンドイッチ現象”が現実のものになっている」

*米国で韓国製品の信頼度が39.7%にとどまり、81.8%を記録した日本製品の半分にも満たなかったという点だ。これでは韓国企業にとっては、日本企業と間違われていたほうがありがたいという話になる。(米国ではサムスンが日本の企業だと認識する人が多いという調査結果を見て)

*日本の海軍力は米国に次ぐ世界2位だ。東海独島近海に日本の最新型イージス艦と艦隊が出動すれば韓国としては対応が難しくなる。

その他多くの日本に対する劣等感とも言うべき記事、或いは羨望が書かれています。韓国から見ると、経済的、社会的に多くの問題を抱えている日本も、うらやましい国に見えているのです。

それが日本に何とか追いつきたいという願望となり、朝鮮日報の東京特派員は李明博大統領の就任で「2008年は韓国が日本に追いつく「元年」として歴史に残る可能性が高い。」とまでその願いを述べています。このような記事を見ると、くすぐったい様な気分にさせられます。

中央日報紙は、「支持率10%台の首相を「手腕家の首相」に仕立て、 韓国が国論の分裂で時間を無駄にしている間に日本政府はしっかりと働いている。日本との格差がさらに広がりそうで、暗たんたる気持ちに襲われるばかりだ。 」と福田政権をも羨むのですから、日本も自信を持たなければという気分にさせられます。


6月28日
米朝合作による寧辺の冷却塔爆破が行われ、映像が配信されました。用済みの塔をこれ見よがしに破壊するという行為は、宣伝臭に満ちて不愉快極まりないものでした。まして、この経費が米国持ちだと聞いては、北朝鮮関係ではケチな米国が気前良く支払った理由が分かるではありませんか。

今回破壊したのは5MWの老朽化した黒鉛炉の冷却塔です。寧辺の50MW黒鉛炉、秦川の200MW黒鉛炉は建設工事は現在中断中とはいえ、無力化の中に含まれていません。この爆破は北朝鮮にとって痛くも痒くもないのです。

最近の米国は北朝鮮に甘くなっています。かつてKEDOと称する北朝鮮に発電用原子炉を提供するプロジェクトが始まった際、米国はその費用を日韓両国が殆どを負担する案を作成し、口は出すが金はださない態度だったのです。しかし、ライス・ヒル枢軸が力を得てからはこの方針は転換し、3月には5万トンの重油支援を行うなど、財布の紐が緩んでいます。バンコ・デルタ・アジア(BDA)の凍結資金を北へ送金する手続きを行ったのも、その一環でしょう。

北朝鮮が今回申告した内容には、核兵器、核拡散については触れられていないのだそうで、常識的には許容できるものではありません。今朝の産経の報道によれば、米高官は米大統領の今回の決定について「歴史に残る大統領になりたいからだ」と述べたそうです。イラクの泥沼化に続いて、北朝鮮の核でも歴史に残る失敗をした大統領と言われなければ宜しいのですが。


6月27日
米国は北朝鮮の核計画申告を受けて、テロ支援国家指定解除を公式に表明しましたが、何故この機会に指定解除をしたのかという疑問に対する答えはありませんでした。推測するに、米朝交渉の中で、核開発計画の申告を行えば指定解除するという約束が米朝間でなされていたのを北朝鮮に利用され、不十分な申告にもかかわらず、解除を表明せざるを得ない状況に追い込まれたのです。

核戦力について触れない申告内容を容認せざるを得ないという、米外交にとって屈辱的とも言える結果と思うのですが、ライス長官は平気の平左という顔をしています。交渉の責任者として北の巧妙な戦術にやられたのを認めることは出来ないのでしょう。

拉致問題の交渉を通じて、北のやり方を熟知している筈の日本ですが、核問題の交渉では米国追従しか出来ませんでした。北の核の脅威を最も受けている国として発言する立場を持っているにも係わらず、拉致問題に足を取られ交渉の焦点が定まらなかったのです。対北朝鮮政策の方針の根本が間違っていたと思います。

核問題では米国の弱腰を指摘し、米朝間の密約とも言うべき核兵器の申告からの除外を認めないと言わなければなりません。北朝鮮が核兵器を廃絶するまで、日本は頑張るのです。六カ国協議に参加したのはその為です。

拉致問題については、今月12日にこの問題の解決も外圧頼みとは情けないことです、と書きましたが、六カ国協議と絡めての拉致問題の解決はもともと無理なこと、自縄自縛になってしまいました。ブッシュ大統領も、拉致問題を忘れないとは言いますが、進行している状況は厳しいものです。これからは日本は独自で問題解決に当たるべきで、それが日本外交の本来の姿だと認識しなければなりません。


6月26日
日中防衛交流で護衛艦「さざなみ」が訪中、湛江に入港しました。「海自艦艇中国訪問を心より歓迎いたします」という赤い幕を張っての歓迎でしたが、一般市民を締め出しての式典が行われ、市民の艦の参観は無かったようです。海自は外国艦艇の親善訪問にはホストシップを指定して歓迎しますが、今回の中国海軍はどうだったのでしょうか。

今次のような海軍の親善訪問は、言うなれば常識的ではありません。中国の国内事情がそうさせているのですが、その裏には少しでも反日の火が起こらない様努力している中国政府の姿が見えています。ガス田合意に反対するサイトの閉鎖など、官製の反日デモを組織していた頃と様変わりです。

四川地震における自衛隊機の受け入れ拒否したのもその線上にある措置、それほどに今の中国政府は反日行動が盛り上がるのが怖いらしいのです。この状況は、これまで中国が推進してきた反日教育の成果の上のものですから、今更天に唾してしまったと言っても後の祭です。

中国指導者にとって、反日は世論引き締めの道具として最強のものですが、その作用が反政府として跳ね返ることが両刃の剣でもあります。建前としての反日を引っ込めることは出来ませんから、相変わらず抗日展示館の建設は続けざるを得ません。この矛盾を解決することは困難ですから、都合が悪いことは包み隠してしまうしかありません。

即ち、市民を自衛艦歓迎式典から締め出し、反日サイトを強制閉鎖し、北京五輪の前後には工場から排出する煙まで出ないようにするのです。五輪が近づくにつれその隠蔽体質がますます顕著になってきました。


6月25日
「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)の報告書が福田首相へ提出されました。安倍前首相の熱い意志を受けて発足した懇談会ですが、福田首相にはこれを受けて立つ構えが全く見られません。

マスコミの反応はどうなのか、読売は社説で「行使容認へ具体論の検討を」と今後の議論の具体化を望むことを主張し、「武器使用や一体化論の見直しをめぐる報告書の提言は重要な論点となろう。」と述べています。

産経は社説に、「非現実的解釈変える好機」として、折角の提言が出た機会であり、その実行には日本の命運がかかっているといっても過言ではないと述べて、政府の対応を求めています。

毎日は「棚上げ覚悟の報告書」という記事を書いて、柳内座長が福田政権の中では棚上げされても、その後の政権での議論を期待しての報告だとしています。朝日は福田首相の冷たい対応振りを書き、現政権下では衆参ねじれ状態もこれあり、議論は失速したと結論づけています。

福田政権としては、この問題は現状のままでも良いのだという判断が根底にあるのかも知れません。或いは、喫緊にやる必要がないと考えているのでしょうか。何れにしても、いざと言う時に現場の部隊の判断に迷いを生ずる原因を放置することになります。シビリアンコントロールを言うなら、このような根源的な問題をきちんと整理しておくのが政府の役割でしょう。


6月23日
岩手・宮城内陸地震で宮城県内に災害派遣されていた陸自部隊は、昨日をもって捜索活動に限って活動を終了することになりました。村井宮城県知事の判断によるものと伝えられます。知事は、不明者の生存は厳しい状況のなかで、自衛隊は本来の任務以外のところで無理をお願いするのは難しいと判断した、と述べています。

何時捜索活動から撤収するかは困難な判断が求められますが、村井知事の決断は英断と思います。朝日は、「泥まみれ、無念の撤収」という見出しで、現場で捜索に当たる自衛隊員達は大変残念だと言っていると書いています。また、不明者の関係者には自衛隊が捜索を継続することを望む声がありますが、状況を総合的に判断しての知事の決断です。

既にご承知のとおり、村井知事は防大28期の陸上要員、平成4年に松下政経塾に入塾、宮城県議を経て平成17年に知事に当選しました。今回の地震に際し、宮城、岩手両県知事からの自衛隊への派遣要請が迅速的確であったことは、村井知事らの自衛隊に対する識見がそうさせたものと思います。

阪神淡路大地震の際しての総理を始め、現地自治体首長たちの適切さを欠く対応振りは非難を浴びました。派遣を終了する際の判断も、派遣開始の判断と同様に重大なものです。今回の事例で見るとおり、首長の判断が苦渋に満ちたものであればあるほど、知事の識見が重要な役割を果たします。今回は、シビリアンコントロールが適切に行われるための良い事例を示したものと思います。


6月22日
世界各地で豪雨と洪水に見舞われています。中国では今月の中旬の豪雨で、江西省、湖南省、広東省、広西チワン族自治区など12省・区で記録された被災人口は2763万人、直接的経済損失は約3000億円に上ると中国当局が発表しています。また黄河中流域の河南省では、26年振りの洪水になりそうだと国家気象局が発表するなど、例年にない気象災害に見舞われています。

米国では、米中西部で「カトリーナ以来最大規模」とされる洪水が発生、ブッシュ大統領も現地視察をするなど深刻化する被害対策に大童です。この被害で農作物の大幅減収が予測され、穀物価格の高騰に拍車がかかるというわが国にも直接の影響が出そうです。

欧州では、仏で洪水が伝えられ、豪州では豪雨で車に取り残された運転手がジェットスキーで救出される映像が話題を呼びました。ロシアでは、雨を防ぐためセメントを空中散布することが行われており、そのセメントを空軍機が誤投下してしまったニュースがありました。

今日本では、九州を中心に豪雨被害が広がっています。梅雨による豪雨は通常は梅雨末期、7月頃に発生するのですが、今年は時期が早いようです。このような災害に対し、現状では対策はそれぞれの国が個別に行っているのですが、グローバルな眼で対策する必要性がありそうです。

世界的な洪水多発傾向が地球温暖化と関係があるのか、科学的な検証は困難だというのが通説のようですが、地球の住民としてそんなことでは困惑するばかりです。洞爺湖サミットでは炭酸ガス削減目標が論議されるようですが、何故その目標値が設定されるのか、その理論的根拠は、など説得力がある説明が先ず必要と思います。


6月21日
台湾で馬英九政権の支持率が急落していると今朝の産経は伝えています。お隣の韓国でも李明博大統領の支持率が危機ラインにあり、期待されて就任した両国の指導者が苦難の道を歩んでいます。わが国の福田政権も同様な状態です。

これに反し、ミャンマーでは現政権への支持を占う新憲法案への支持率93%だとか、政府が強権を振るう中国、北朝鮮では支持率の調査さえ行われません。この両極端の国家が隣り合って存在しているのが現実です。

先日、静岡に住む娘から電話があり、高校生の孫娘が修学旅行で中国(上海、広州)へ行くことになったのだが、学校で父兄に説明会があった際に父兄の反対が多く、戸惑ったとのことでした。

食の安全に始まり、地震が怖いとか、もし行く事になれば生徒に付き添って行きたいとか、説明に当たった校長をつるし上げるような状況だったとのこと、娘は何故これほど反対が強硬なのか理解できなかったそうです。私は校長が広州を旅行先に選択している意図に賛意を持ちますが。

民主政治の下の社会に慣れている一般市民にとって、政治体制の異なる国の体験を若い時にする貴重さというのは数日間の食の安全には代えられないものがあると思います。何をやるにもリスクはありますが、それを避けてばかりでは人間生きる価値がありません。海外で適切に危険を避ける知恵を養うことも大切です。

自分の子供を危険から遠ざけたいのは誰しも持つ親心ではありますが、東海地震の恐れの高い静岡の父兄が、中国の地震の恐れを言うとは何をか言わんやです。

今の状況でミャンマーへ旅行せよとまでは言いませんが、台湾、韓国、中国など近隣の国々へ行く機会があれば、反対する理由はないと思うのです。少なくとも生徒たちは自分たちが幸せすぎる環境に育っていることを知る事が出来る筈です。


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