19年12月中旬の記事





12月18日
 産経の北京特派員・福島香織さんの中国滞在ビザが発給されず、帰国せざるを得ない状況に追い込まれていることを福島記者がブログに書いています。それによれば、他の記者たちのビザは3日もあれば更新されるのに、福島記者のビザは3ヶ月経っても更新されないのだそうです。その結果、年末には帰国しなければならないとのことです。

 今年10月に福島記者の活躍振りを本欄でも紹介しましたが、福島さんは当局からやんわり言われているそうです。曰く「福島さんの最近の記事は悪意を感じるマイナス報道ばかりですね。昔はもっとバランスがとれていましたよ」と。つまり、当局から睨まれ、ビザ更新ができない状況と見ても良いようです。

 私どもにとって価値ある報道は中国当局には好ましくない、だからビザは更新しないとは汚いやり方ですが、如何にも中国らしい手段と言えましょう。こんなやり方をやっていては、オリンピック開催国の資格はないよと北京駐在の各国の記者たちが団結して当局と掛け合えないのでしょうか。



12月17日
 昨日に続いて太田述正氏について。彼のブログに次の様な記述がありました。

 「防衛省キャリアは、IT音痴、英語音痴、会計音痴という三重苦の世界に呻吟しています。(軍事音痴であることはハナから問題にしていません。防衛省キャリアの大部分は、軍事に何の関心も持っておらず、従って勉強もしていません。軍事なんてのは自衛官の仕事だ、というわけです。)防衛庁キャリアは、これほど何も知らないわけですから、やっていることと言えば、幕僚監部にいる自衛官が起草した文章の「てにをは」を直すことくらいです。」

 彼自身もキャリアの一人ですから、身内への辛辣な批判です。そして、この内容が一面の真理を含んでいることは否めません。防衛省の官僚である彼らは、自衛隊員である以前に省を取り仕切るのが最大の仕事である官僚でありました。守屋前次官が重大な災害が発生している時などに、のほほんとしてゴルフに興じていた心理はこれまで理解できませんでしたが、実務は自衛官にやらせておけばよろしいという構造があったことを太田氏は教えてくれました。

 これを考えれば、自分の行動を束縛されたくないと GPS付き携帯に反対する心理もよく分かります。しかし、考えて見れば、携帯が発信する微弱電波により、そのおおよその位置が明らかになるのですから、防衛省の指揮所は主要幹部の所在を表示するシステムを構築するべきだと夢想します。しかし、その様なシステムが出来れば、携帯を持つ防衛官僚はいなくなるのかも知れませんが。



12月16日
 今朝の産経、「(土・日曜日に書く)政治部・阿比留瑠比ネットで変わる情報空間」がブログについて書いています。これによれば、新聞記者の立場にあっても多くの有用なブログがあるとの所見が述べられています。

 最近のブログの隆盛ぶりはなかなかのもの、特に日本で書かれるブログは世界で最も多いとの調査があります。米ブログ検索サービスTechnoratiによれば、世界の 37%のブログが日本語で書かれたものであり、今年になって英語によるブログを追い抜いたのだそうです。英語と日本語の使用人口比を考えれば、信じられない数字です。日本人には物書きが多いと思ってはいましたが、これほどの状況になっているとは知りませんでした。
 
 ブログの効用については、阿比留記者がその一端を書いていますが、ニュースや新聞・雑誌に掲載されない情報が書かれ、それに対する意見など様々な階層、思想の人達の考えを知る事ができる点に尽きると思います。しかし、それにより書いた人の人物判断や、世の中の出来事を推量するのはかなり難しいことのように思えます。

 先週のフジテレビ報道2001に元防衛官僚の太田述正氏が出演し、防衛調達は全てが上乗せされた金額だとの極論?を吐いていましたので、官僚OBに時折見られる異質な人かなと思った次第です。ところが、同氏のブログはなかなか興味深いもので、例の防衛省の次官人事問題など丁寧に書いていますし、現役当時の話もあって当時を知る人にはあの話の裏はこうだったのかと合点が行くところもありそうです。

 TVで受けた印象と、ブログに書かれたことの違和感はなかなか取れませんが、どちらが太田氏の本当の姿なのか、コロネ会員にも同氏と仕事上の交際があった方がおられると思います。氏は、内局人事2課長、教育課長、防大総務部長、仙台防衛施設局長など歴任、2001年の参院選に民主党から出馬しましたが落選しています。私が同氏についての現役時代の印象としては、冷静な理論派のように感じましたが。



12月15日
 護衛艦「しらね」の CIC付近から出火、長時間にわたり火災が続きました。不祥事が続く海自としては泣きっ面に蜂の出来事ですが、不幸な出来事は重なるものです。一日も早い士気と秩序の回復を期待したいと思います。

 国会の会期が延長され、新テロ法案を成立させる態勢がほぼ固まりました。日本も何とか体面を保てそうですが、政治の世界は良く言われる様に一寸先は闇です。防衛省関連の疑惑がどこかへ飛び火するような事態があれば、折角作り上げた法案成立への態勢が崩れます。

 文藝春秋1月号に小池前防衛相が小泉前総理と小沢民主党代表についての評論を書いています。小沢氏について、氏は政局と理念(国連原理主義とも言える思考)という二つのカードを使い分ける政治家だと分析しています。小池氏の見方によるなら、海自の給油活動については国際情勢などお構いなく理念カードを使い、国際的な批判の声など蛙の面に水なのです。

 そう小池氏が分析するとしても、日本の国際的地位が低下するままにして置くのは如何に国連原理主義者である小沢氏としても、内心忸怩たるものがあるに違いありません。先の大連立構想も、これが成れば給油活動再開が成ることを見越していたと思われます。ところが、党内の反対で連立が潰され、孤立無援となって辞意を表明するに至りましたが、党内事情で代表を継続することになりました。

 8月の段階で、本欄に、「(小沢民主党が)反対し続けてもテロ特措法は成立し、日米関係には当面の影響は出ない、ことを見越しての反対ではないかと思うのです。」と書きましたが、その後安倍内閣の崩壊などで状況が混乱し、一旦海自補給艦は撤収するに至りました。しかし、今になって再議決により何とか取り繕うことができる状況が生まれ、小沢氏は内心ほっとしているのではと思う次第です。勿論、小沢氏はこのような態度は毫も見せませんが。



12月14日
 情報漏洩で海自の3佐が逮捕され、海幕長が引責辞任に追い込まれる事態となりました。産経の報道によれば、今回の事件では「たどることもできないほど無数にコピーが繰り返され、機密は爆発的に拡散、漏洩した」(警察幹部)ことが判明したそうです。また、読売は「地方の部隊との温度差はまだ大きい。現場の隊員一人ひとりまで徹底し切るのは難しい」と海自幹部の発言を伝えています。

 私の聞いた範囲でも、海自の幹部が言うには、いくらでもずるずると出てくるので、手の打ちようがないのが実情だとのことです。誠に遺憾な事ですが、現場の隊員たちの保全に対する意識、責任感は深刻な危機にあるのが実情です。

 今回の事件は、イージス・システムの勉強で米留までした3佐、即ちこのシステムの保全上の重要性を熟知ている筈の幹部が、簡単に秘密を友人の3佐に洩らしたことが示すように、中堅幹部にまで保全意識の欠落が浸潤しているのが判明したことと思います。

 空自でも、情報職域の1佐が米軍から得た情報を漏洩したとして書類送検された事件が今年始めにあったばかり、この種事件に共通するのは保全に対する脇の甘さというか、想像力の欠落です。自分が秘密を漏洩したらどのような結果を生むか、組織への影響、自分自身への影響へ思いが至らないのでしょう。

 倫理的な保全意識の高揚については限界があるとするならば、洩らした場合にどうなるかについて罰による恐怖心を持たさなければなりません。特に刑事罰などを受ける可能性について徹底する必要がありそうです。関係法によれば、「特別防衛秘密を取り扱うことを業務とする者で、その業務により知得し、又は領有した特別防衛秘密を他人に漏らしたもの」は10年以下の懲役に処すとあり、それを知っているならば軽易に同僚に洩らすことなどあり得ない筈です。

 しかし、現状はそんな罰則があることなどどこ吹く風、軽易に秘密事項がやり取りされていたのです。罰則など法令が厳格に適用されるという状況を作り上げることが喫緊の課題ではないでしょうか。

 更には、現行の個別法ごとに罰則が懲役1年(国家公務員の守秘義務違反)から懲役10年(特別防衛秘密の漏洩)までばらつきがあることも、保全軽視の原因の一つと思われ、法的な整備が必要です。今までの隊員を信頼し、その保全意識に依存するという方策はそれなりに機能して来ましたが、最近若年隊員への蔓延が懸念されるモラルの崩壊は、隊員を信用するという統御の基本だけでは御しきれないものが出てきたと感じられます。



12月13日
 8月半ば頃、北朝鮮がニューヨーク・フィルを招待するというニュースがありましたが、それが実現することになりました。米国務省は反対する立場にないと言っていますが、テロ支援国家に指定している状況ならば、米国を代表するオーケストラを出すことはしない筈です。

 この件について、ヒル次官補は「北朝鮮がその殻を破り表に出てきつつあるという兆候、この変化は、核問題の交渉の進展において有益なものだ。」と語っているのですが、ニューヨーク・フィルを招待したらどうかと北に持ちかけたのは一体誰なのでしょうか、語るに落ちた言い方に聞こえます。

 同オーケストラの訪朝公式発表の場で、人権問題など厳しい質問がオーケストラ代表と北朝鮮大使に飛びましたが、それを心配するのが人々の常識というものです。

 武器や航空機の輸出大国である仏、この国を訪問中のリビアのカダフィ大佐はエアバス多数機購入を契約しました。これを受けてサルコジ大統領は満面の笑顔です。しかし、リビアは人権に関しては問題国、仏国内で厳しい批判を受けており、今回の訪仏には反対の声が大きいのです。

 金正日やカダフィのような過去にテロ行為を行った前科がある指導者に対し、どう接するかをこの二つの事例は示しています。現実はオーケストラの訪朝は実現しそうですし、カダフィ大佐は仏大統領の歓迎を受けています。これが国家が選択する現実の道だと納得するのか、悩ましいところです。

 産経の記事にカンボジア特別法廷の審理が本格化している報道がありますが、その中に、キッシンジャー大統領特別補佐官のポルポト派への支援発言が取り上げられています。キッシンジャー氏はボルボト派の虐殺などの非行を知りながら、ベトナムへの対抗上ポルポト派を支援したというのです。これも国家が選択する現実の道の一つです。

町村官房長官は先日の記者会見で、日中ハイレベル経済対話でまとめた報道文書を中国側が書き換えて公表した想定外だったと言いました。メディアにはこう表現しても結構ですが、本当に想定外だと思っていたなら困ったことです。何でもありだということを認識していなければならないでしょう。



12月12日
 自公党首が会談、国会の会期を延長する方針が決まりました。福田総理としては何としても新テロ特措法の成立を図るという意志を示しました。国会解散の可能性を含めての決断ですから、これは了としましょう。

 年明けに衆院で再決議して法案が成立したとします。朝日が今朝の社説で次の趣旨のことを書いています。即ち、一年先のことを考えれば、新テロ特措法の期限は1年ですから、状況は更に悪化することが予想される。恐らく衆院選が行われて与党は 2/3を失い、再派遣された海自補給艦はまたも帰投しなければなない、と。

 この予想は恐らく当たるでしょう。また、再々派遣の法案は成立することはないでしょう。これを踏まえれば、派遣の期間は少なくとも2年は必要と思います。公明党の主張で派遣期間は1年になったと聞いていますが、見通しが甘いのではないかと不安です。

 次年度予算で、F-15の改修費が大幅に削減されることになったと報じられています。改修の必要性がなくなったためではなく、防衛省の不祥事がその理由だそうです。こんな理屈で防衛の楯の強度を低くしても良いのでしょうか。確かに官僚の不祥事は許されない事ですが、東シナ海の情勢を見れば防衛力の低下は領土・資源という国益にに直接影響します。日本が開発を進めたら海軍を出動させると言った隣国があることを忘れているのでしょうか。

 日中ハイレベル経済対話で作成した文書を中国側が一方的に書き換えた問題は、中国側が修正に応じないことを表明しました。中国政府、或いは党の内部で不一致が起こっているという見方も出ています。このような内部的な不一致から生ずると思われることはこれまでも再三ありました。これを外部には問題ないと強弁するのが中国のやり方です。

 海軍を出動させると言い、かつ福田訪中までにガス田問題を解決させることに同意した国が同じ国であるとは信じられません。福田総理もよほど褌を固く締めて訪中しないといけませんが、この前に行われた小沢民主党首の微笑訪問は総理訪中の阻害要因にこそなれ、益になりませんでした。



12月11日
 今朝の産経の記事【千変上海】に前田徹記者が「中国安徽省ではガソリンスタンドの長い列に業を煮やした運転手がけんかを始め、1人が刺し殺されるという事件まで起きた。」と報じています。私が先々週滞在した西安でもガソリン・スタンドにトラックの長い列が出来ており、軽油が逼迫しているのが感じられましたが、ガソリンについてはまだ逼迫感はありませんでした。

 「千変上海」で伝えられる様に、中国経済は株や不動産のバブルを起こすなど過熱気味ですが、内陸にあって上海や広州に発展で遅れを取っている西安でも不動産バブルは過熱していました。

 中国のマンション販売は、部屋の広さで販売され、内装は買い手がやるのが通常のスタイルだそうです。西安で今マンションを買うと、 100平米で1000万円程度で買えるそうですが、これでも上海の半値以下だそうです。北京、上海では 100平米1億円の億ションも販売されているとのこと、オリンピック景気もあってバブルは止まりません。中国では土地は国有ですから、土地付き販売の日本と違って一層の高値と言えましょう。

 ガイドの中国人は、是非西安でマンションをお買いなさい。そうすれば数年で倍になりますよ、と言います。この言葉どおり西安でも投機目的での不動産売買が盛んになっており、そのためにマンション建設が大規模に行わる傾向もあるようです。郊外では高層マンションの建設ラッシュが続いており、風景が毎年変わってしまうのは当たり前になっているとのことです。

 このような不動産価格の高騰も、先日本欄で書いた様に中国のマス(mass)の慣性力のなせるところが大きいように思います。特に西安は教育とハイテクの都市として最近発展が著しく、発展への慣性力が強く働く地域となっていると感じられます。




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