19年10月初旬の記事



10月10日
衆院予算委員会の審議で、ヒゲの隊長佐藤正久現参院議員の発言、「自衛隊基地の警備に当たっていたオランダ軍が攻撃された時には、情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれ、応戦するつもりだった」を福島社民党々首が取り上げ、「法の支配を踏みにじるもので断じて許せない」と追求したそうです。

 残念ながらこの場面は見ませんでしたが、れっきとした弁護士である福島党首の思考は将に法匪に当たると思います。佐藤氏の個別的自衛権を発動する状況を作為して、法の下でオランダ軍と一緒に戦うという覚悟をさせたのは政治家達です。

 福島氏はこれまで様々な突飛な発言で話題になっています。例えば、第 153回 国会予算委員会での発言(アラビア海から)「B52が、実際に艦船から飛び立ち、攻撃をするわけです」など軍事知識に欠けた発言がありましたから、一々気にすることはないのかもしれません。

 とは言うものの、オランダ軍に周辺警備を依頼するのさえ自衛隊としては自尊心を内心に秘めなければならないのです。そのオランダ軍が攻撃された時、見てみない振りをするのは心ある人にとって不可能なことです。まして、武器を持ち戦闘能力がある自衛隊にとっては出来ない相談です。

 最近の裁判でも判決には常識的に頷けないことが時に見られます。法律の適用が優先され、人間の感性から見ての判断と食い違うことがあるのです。それを少しでも減らそうという制度が裁判員制度だと思います。福島氏の発言も公募された裁判員に判断して頂かなければなりません。



10月9日
 一昨日の産経に、野口中国総局長が書いた「憂鬱なる北京五輪後の中国」という記事がありました。それによれば、「中国における取材の「タブー」は、要人の動静、私生活、批判、一定レベル以上の高官の汚職、スキャンダル、軍関連情報、民主化の言論とその動向の取材、地下教会や非合法組織、法輪功の動向と当局の具体的対応、党の正当性にからむ歴史…それに加えて今は、北京五輪批判である。」と書かれています。

 欧米、台湾で高まっている北京オリンピック反対運動に北京当局は懸念を抱き様々な対策を講じていますが、その一つに外国記者達の取材緩和策があり、今年に入ってから08年のパラリンピック終了まで、外国人記者は取材対象になる団体や個人の同意だけで取材ができることになりました。しかし、在中記者たちはこれに悲観的だそうです。

 野口総局長の記事は微妙なものでした。野口記者の取材を受けた者が脅迫されたり、拘束されたりするケースも増え始め、行方不明の人もでたり、連絡を取り合っていた「直訴者」は最近、いわゆる「労働改造教育所」送りになったとのこと、これを報ずることはかなり当局の逆鱗に触れ兼ねないことです。これが共産党支配下にある社会の実態です。

 今朝の産経には、15日からの中国共産党大会を控え、民主活動家達の締めつけを強化しており、五輪反対の人達もその対象とか、産経の北京駐在記者である福島香織さんも当局からやんわり言われているそうです。曰く「福島さんの最近の記事は悪意を感じるマイナス報道ばかりですね。昔はもっとバランスがとれていましたよ」と。

 青蔵鉄道が開通した時に、中国政府外交部が外国記者たちをこれに招待しましたが、産経は招待に洩れました。当局は「福島さんの過去の記事をみて、これは受けない方がいいのではないか。」と言って断ったとか、産経の北京での活躍と安全を祈ります。



10月8日
 今朝の産経掲載「やばいぞ日本」は自衛隊が使用する電波周波数帯の受ける制約について重い指摘をしています。即ち、防衛庁が「国防の神経」と位置づける最重要周波数帯を次世代携帯電話に割り当てる方針と、その周波数帯に通信事業者を募る内容が掲載されていたからだ、というのです。この周波数帯は空自が運営する警戒管制レーダーの帯域や戦闘機誘導用の帯域が含まれているとのことです。

 軍事用に使われる周波数帯は広がる一方です。VLFからVHF SHF EHFと電波の周波数帯域全般にわたって、目的に応じて使用される傾向が強まっていると言えましょう。個々の周波数帯でも、スペクトラム拡散方式などで単一の周波数だけでなく広い周波数帯を使用する方式が電波妨害の回避などで使われる様になっています。電波情報を収集するELINTも、その収集周波数帯はVLFからEHFまで広範です。

 レーダーでECCMのために使われる周波数ホッピングなどの方式も、実は民用で使われていることを知りませんでした。スペクトラム拡散は携帯電話でつかわれ、CDMAがそれに当たるのだそうです。民用にして然り、軍事用においては更に技術的な進歩があるに違いありません。

 産経は総務省の電波管理が軍事へ眼が向けられていないとし、自衛隊は軍隊ではないことがその理由の一つと書いています。総務省のホームページには、電波管理について各周波数帯について何に利用されているかが書かれていますが、軍事用という言葉は見当たりません。

 電波管理を担当する総務省の官僚たちの軍事に対する知識、理解がどのようなレベルであるのか分かりませんが、自衛隊が戦うために何が必要なのかを理解しているとはホームページを見る限り感じられません。



10月7日
 今朝の産経紙、漫画家の倉田真由美さんが紙面批評欄で盧武鉉大統領夫妻が手をつないで軍事境界線を越える姿をTVで見て、「百聞は一見にしかず、云々」と感想を述べています。4日の本欄で見られるものは皆見るべしと書き、アリラン公演を見るべきかどうかについて述べましたが、体験しなければ絶対に分からないことがあることは確かです。

 朝鮮日報電子版に、辛貞録記者が「記者の2泊3日訪朝記」を書いています。韓国人にとっても、不思議な国北朝鮮の印象が描かれていますが、アリラン公演についても触れています。

 辛記者は、演技が始まるとすざまじいばかりのスケールと高度な技術に圧倒され、「全世界どこに行ってもこのような公演は見られないだろう。」と感嘆の声を挙げました。しかし、演技が進むにつれ、「偶像化」が頭に浮かんで来たと感想を述べることになりました。金正日が意図した金王朝賛美の演技が、それがどんなに精緻にかつ見事に演技されても、その意図とは相いれないものを見る人は感ずるのです。

 また、滞在中の案内係が「将軍様があれほど苦労して作業服ばかり着ていらっしゃるのに、良いスーツ1着も作って差し上げられないと泣き出しそうな雰囲気だった。」と言うににはア然としたと記者は書いています。盧武鉉大統領を歓迎する人波の中の女性が涙ぐんでいた映像もありましたから、北朝鮮の人達の心は私どもには推測できない部分があります。

 このような北朝鮮の人達の心情は極めて純粋に感じられますが、首領様のためには何物をもなげうつという心は、多くの情報に汚染された私などには信じることが出来なくなっているのかも知れません。即ち、本心を隠しているのではないかとか、徹底した教育のためだとか、裏を読みたい心が出てくるのです。

 それでも、実地にその情景を見れば、(映像では不十分です)真実は感じ取れるのではないかと思います。



10月6日
 民主党小沢代表が、民主党が政権を取ればアフガンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)に参加するとした論文を「世界」11月号にに掲載するそうです。給油活動は駄目と言っていた代表の言葉ですから、違和感は拭えません。ISAFは国連決議で派遣されているとは言え、対テロの地上戦、具体的にはタリバンと戦っている実戦部隊です。

 小沢氏が参加を主張するISAFは、国連憲章 6.5章に基づく正規の国連PKO ではなく「国連安保理に派遣を承認された有志国連合軍」なのですから、法的立場は微妙と言えましょう。

 今まで国連決議に基づいて PKOなどで派遣された自衛隊の部隊は、武器使用など厳重に制約を受けていました。これに対し、小沢氏は異論を唱えたことは無かった筈、豹変とも言える論文には驚くばかりです。これが給油活動の新法への対案の一環であるなら、防衛省・自衛隊にとっても驚天動地のことであると思います。

 来るべき解散総選挙はそう遠くないと見られます。その時、民主党が政権を取るような状況ならば、インド洋の給油活動は中止されたままの公算が大きいと思われます。当然ながら、米国を始めとする対テロ連合は日本に対する姿勢を変えているでしょう。

 国連原理主義者とも言える小沢代表の主張が国際社会で受け入れられるのか、今朝の産経古森記者が伝えるヘリテージ財団のタシック氏こ言葉「小沢氏が政局事情に合わせて勝手気ままにもてあそぶことに私は強い憤りを覚える。」に同感を覚えます。



10月5日
 3日、六カ国協議の合意文書が公表されました。内容はさておき、朝鮮半島南北首脳会談の最中に公表されたことは、何らかの関連があったことをうかがわせます。合意文書の公表は、協議終了の直後ではなく、本国との調整が必要だと言うことで2日間公表が延期された経緯がありましたし、首脳会談は当初8月末に行われる予定でしたが、10月に延期され、示し合わせた様に今週に行われました。六カ国協議そのものも、北朝鮮が強引に9月末まで延期させる形になっていたのです。

 南北共同声明では、核問題について六カ国協議の合意が順調に履行されるよう努力するとしています。これは、首脳会談において核問題をどう扱うかが一つの焦点になっていたのに対する回答であり、六カ国協議に下駄を預けた形になりました。韓国内には、首脳会談が北朝鮮の核問題の解決に寄与すべきだという声が大きかったのを六カ国協議の合意が救った形です。即ち、中国の配慮があったのではないかと思うのです。

 六カ国協議は、中国が主催し合意の取りまとめを務めています。これに北朝鮮が時々異論を唱え、或いは会談開催を拒否するなど抵抗する姿勢を見せています。北朝鮮は本気で中国に対抗する気があるのか、エネルギー資源と食料の多くを中国の支援に仰いでいる北朝鮮が如何に主体思想を言っても、物乞いをしなければ生きて行けないのが現状、中国の支援が途絶えたら生存できません。

 このように、六カ国協議の合意文書と南北首脳会談の間の巧妙な日程調整の裏には、中朝の取引が匂います。



10月4日
 訪朝中の盧武鉉大統領が北朝鮮ご自慢のアリラン公演を観覧したそうです。この公演を見ると北朝鮮の宣伝に感化されるというので、どうするか韓国内で論争がありました。これを見て北に取り込まれる様な大統領でしたら、大統領の資格はないと思うのですが、韓国民は心配なのです。

 私見を言えば、見られるものは皆見るべしです。長時間の公演で児童の出演者がトイレにも行けず健康上の問題が出ているとの指摘もありますが、これも見ればその実態を知ることができます。更には、北朝鮮の宣伝の実態の一端が分かり、透徹した眼で見ればもっと多くの情報を得られるのです。文字通り百聞は一見にしかずでしょう。しかし、この見方はかつて情報職域にいた私のものです。

 国家元首が戦争状態が終了していない相手国の宣伝ショーを見るかどうか、一考の余地があります。矜持こそが大切、日本の総理でしたら、誘われても見ないと思いたいのです。

 今回の六カ国協議の合意文書が公表されました。あちこちに配慮するとこんな合意になるのかという曖昧さがありますが、参加各国は歓迎の意を表しています。多数国が参加する会議の合意とはこのようなものになる見本に見えます。

 日本としては、北朝鮮のテロ支援国家指定解除が気になるところですが、解除は米国の既定路線と考えなければなりません。米も日本の要求との調整に悩むところがあるでしょうから、ここは解除をして欲しくないと曖昧に要求するのではなく、具体的な要求を示しておくべきと考えます。



10月3日
 南北首脳会談のために北鮮入りした盧武鉉大統領を出迎えた金正日、顔に生気がなく表情も冴えませんでした。65歳にしては老け込んだ印象です。暴飲暴食、酒池肉林の生活がそうさせたのか、日頃のストレスは人間的な本能を満たすことで発散させてきたのでしょう。

 それにしても、平壌の主要道路を閉鎖し、人の出入りを制限して陸の孤島化させてまでの措置は一体何のためなのか、これまでの金正日の行動を見れば、自分自身の安全を考えてのことに違いありません。独裁者の思考は人間不信に固まっているようで、リビアのカダフィ大佐も厳重に行動を秘匿しているとか、1986年に米爆撃機で狙われた恐怖は拭えません。金正日もカダフィも、自分の統治にそれほど自信がないとは哀れなものです。

 金正日は更に事故やテロを恐れてか航空機嫌い、北京詣でも必ず列車、ロシアに行くにもシベリア鉄道経由でしたから、徹底しています。噂では、列車移動の場合、2時間間隔で先発列車、本列車、後発列車が順番に出発するのだそうです。このうちどれが金正日が乗った列車なのか分からず、列車が移動する6〜8時間、線路周辺への接近は全て遮断されるということです。それでも04年には龍山駅での爆発事件が起こり、金正日は辛うじて難を逃れました。

 独裁者の思考を想像するのは難しいのですが、ストレスが溜まる環境にあることは間違いありません。金正日は父親の金日成と比べると小心者、父親の自信タップリの態度と比較すると行動に揺らぎが見えます。



10月2日
 今日の産経正論は、西尾幹二氏が米国が仕組む米中経済同盟が日本を締めつけているとし、ぞれによって福田政権が国益を見失い、軍事的にも経済的にも米中の利己主義に翻弄されつづける可能性を暗示していると暗い予測を立てています。また同じく産経の「やばいぞ日本」では、円の実力低下を検証し、警鐘を鳴らしています。

 この二つの主張は共に中国の経済力躍進が米国の経済政策へ影響し、日本経済へ悪い影響を与えていると言う点で一致しています。日中両国の GDP は五年後には逆転するのは間違いないという予測がありますし、既に株式市場の資金総額は中国が日本を上回ったと言われます。

 歴史的にみると、米国の対日、対中の政策はどちらに好意的に進んできたのか、結論づけるのは難しいことですが、我々日本人から見ると米国は中国寄りの政策を取ってきたことが多いのではないか、米国人は中国人に対し心情的な好意を抱いているのではないかと疑いたくなることがままあります。

 「中国の赤い星」を書いたエドガー・スノーは毛沢東に利用されたと評価される著作家ですが、時のルーズベルト大統領は大東亜戦争が始まるとスノーを非公式な情報提供者に任命し、親中・反日のスノーを重用しました。

 また戦中には援ショウ・ルートを構築して、国民党政府を援助するなど戦前には対中支援の実績が目立ちます。中国の内戦が終わり、共産党政権が成立すると米中は対立関係に入りました。しかし、このところ中国が強大化するにつれ、米国には伝統の功利主義的なプラグマティズムが出て来た様に思われます。更には、慰安婦決議など親中反日の動きもでて来るなど、親中の傾向は強まっています。

 同じ民主主義国家として米国と同盟関係にある日本と、共産党政権下にある中国とどちらを選択するか、自明のことと思うのですが、そこが米国のしたたかなところ、やわな戦略眼と外交力では何時も美味い汁を吸われてしまいます。



10月1日
 石原慎太郎都知事が先月ツバルに行き、温暖化による海水面上昇の状況を視察しましたが、それについて今日の「日本よ」に書いています。海水面の上昇で作物が作れなくなり、ニュージーランドの援助で食料が入ってくるが、その包装などのゴミの山が処理できずにいるとのこと、何時からとも分からない遠い昔から延々と続いてきた生活が、文明のもたらす副作用とも言うべきものによって破壊されている状況は、人類の幸福とは何によってもたらされるのかを考えさせられます。

 石原氏はホーキング博士の、宇宙的な時間においては地球の文明は瞬間的だという言葉を引用していますが、人類誕生から数十万年を経て、その最後の一世紀足らずで文明の爆発を見、地球規模の環境破壊が始まりました。文明の発達がなければ、バヌアツの人達は悠久の時の流れの中で悠々と暮らせたのです。

 民主化運動のデモを制圧されたミャンマーですが、この国の貧しさは周辺国と比べても際立っています。一人当たり GDPは僅かに 219ドル、隣国のタイが3179ドルですから、1/10以下です。東南アジアには最貧国とも言える国が幾つかありますが、カンボジアが 454ドル、ラオスが 606ドルとなっており、ミャンマーはダントツです。(データは外務省による)

 ミャンマーの人達も恐らくバヌアツの人達と同じような状況と思えます。この六月にカンボジアの田舎を歩き、電気も水道も無い人々の生活が今も続いているのを見て、文明が入り込まなければ昔ながらの生活が営まれ、果てしない欲望も生まれなかったのであろうし、都市部で見られるゴミの山も生まれまいと思った次第です。

 人口五千万、一人当たりGDP219ドルのミャンマーが多くの予算を使って38万の兵力を維持し、その軍が国民を弾圧するという姿は見るに耐えません。文明は人々に富をもたらしましたが、その恩恵を受けない国には文明のひずみだけが流入しているのです。

 ツバルは農業及び漁業が主要な産業で、自給自足的な経済構造です。何も悪いことをしていないのに、こんな状況に陥った責任は先進文明国にあります。石原都知事が、「日本の技術と金をもってすれば容易な護岸による島国の水没を救済してやった方が国家としての存在感をはるかに強く示すことにもなろうに。」と言っていますが、これは先進国の責務であるように思います。




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