19年1月上旬の記事





1月10日

 昨日防衛省が正式に発足しました。自衛隊法でも海外活動が本来任務とされることになり、隊員諸官も仕事の範囲が広がります。これは多くの国々の軍が任務として行っている事、大変ではありますが、態勢を整備し、粛々と行って行く事が大切と思います。

 海外活動以上に重要になったのが、日本の安全保障に関する政策面の貢献です。外務省が担当してきた安保関係の対外折衝も防衛省の出番が増えるでしょうし、特に米国からはそれを求められるでしょう。湾岸戦争、或いは9.11以降の諸活動など制服自衛官も出番が増えています。

 これに関連して、今朝の朝日は久間防衛大臣が参事官への制服の登用も考える、これができなければ参事官制度を廃止することを含め、検討するとの意向を表明したと報道しています。3年前に古庄元海幕長がこれを提案、当時の石破長官が検討を指示しましたが、大野長官になって現行のままに止められた経緯があります。

 日米間で行われる諸会議で、米側は制服が出席しているのに対し、日本側は背広だけという映像はしばしば見られるところ、信頼関係を作るには相手国との相対性も重視しなければなりません。空自総隊司令部の横田移転など制服における日米間の情報交換は更に進化しています。これを生かすためにも、組織の欠陥とも言うべき防衛政策への制服の関与の場が欠けているところを是正しなければなりません。



1月9日
 産経紙の「オピニオンプラザ・私の正論」の今月の入選論文が発表されました。テーマが「日本外交の進むべき道」で、それぞれの正論が展開されて興味深く読みました。入選者の一人上月氏は中卒とのこと、またもう一人の入選者の青山氏は女性の小学校講師、決して外交に興味を持って関わるような環境にはない人達ですが、堂々と論陣を張っているのは凄い事です。それだけに日本外交が一般の国民にも問題点が多いと認識されているのでしょうか。

 上月氏の論点、「日本における外交の欠陥が国論の結束力の弱さにある。」との指摘は言われるとおりですが、これは民主主義国家の共通の弱点でもあります。イラク政策をめぐる米共和党と民主党の意見の相違は、NATO諸国、或いは日本にも大きな影響を及ぼしています。これは北朝鮮政策においても明らかで、ブッシュ後にどのような政策がとられるのか同盟諸国にも戸惑いが見られますし、北朝鮮にも乗じられる原因となっています。

 今日の産経正論で渡辺昇一氏が東京裁判の不当性を多くの日本人が認めないと嘆じています。今朝の産経が特集で組んでいる北方領土問題にしても、日本人の返還に対する強烈な意志が感じられないことが、ロシアに乗じられる隙となっています。多様な意見を許容する民主主義態勢の下では、ある程度の民意の揺れは仕方ないことですが、これが衆愚になっては困ります。そうならないためには、優秀な指導層がしっかりと道を示すことが必要条件のように思います。



1月8日
 昨日は強風の中で習志野で空挺団の降下訓練が行われ、無事終了しました。その練度には素晴らしいものを感じます。隊員の日頃の精進が結集したものでしょう。明日防衛省が誕生しますが、隊員たちの精強さがあってこそ国民の支持を得られます。イラクで頑張っている空自の隊員など海外で活動している隊員たちも、地道な努力が自衛隊への信頼につながています。

 産経の記事に、イランの原子力施設に対しイスラエルが空爆を計画していると英紙が報道したことが掲載されています。 何故、イスラエルは今イランの施設を攻撃する事を考えているのか、二つの要因があります。アフマドネジャド大統領がイスラエルの抹殺を唱え、強硬発言を繰り返している事、また弾道ミサイル・シェハブ-3の発射テストを核弾頭のダミーを搭載して行おうとしていることです。

 言うまでもなく、イスラエルは過去にイラクの核施設を攻撃し、イラクの核開発を阻止した歴史がありますし、自国の安全のためならあらゆる非常手段を採ることにためらいはありません。イスラエルは、イランが核弾頭を2009年には保有するだろうと見積もっているとのこと、今や猶予はならないと考えているのです。

 イスラエル空軍はイランの核施設があるナタンズ( Ntanz)までの攻撃ミッションのため、等距離にあるジブラルタルまでの訓練飛行を既に行っているとのこと、サンデータイムス紙は、イスラエルパイロットが「 99%の成功率では駄目で、100%でなければならない。」と話したと伝えています。

 もしこの攻撃が行われるなら、その結果は国際社会に極めて予測し難い混乱を引き起こすでしょう。米国がペルシャ湾に空母を増派して2隻態勢とし、英国が掃海艇を派遣する措置を取っているのは、この情報と何らかの関係があるのかも知れませんから関心を持たざるを得ません。



1月7日
 今日の産経【平成十九年 はしがき】欄に、産経編集委員の田村氏が現代を「予測性の時代」だと表現し、カルブレイスの「不確実性の時代」に対峙させて考えてみるとして論を展開してます。言葉として「不確実性[というのは分かるのですが、「予測性」とは何を言うのか、分かりにくいところがあります。田村氏もこの点については気付いているものと見えて説明を加えていますが、予測性ではなく予測について言っているように思えます。

 言葉の問題として、田村氏の文章の最後の部分に「北朝鮮の核の脅威も、核兵器を現在持ってなくても政府が粛々と「抑止できる力」を証明しない限り、とりとめもない核武装論議が続き、いたずらに国際世論からの警戒感をあおる。」と書いていますが、意味が取れるでしょうか。私には悪文に見えます。

 この文章は、「北朝鮮の核に対しては、日本政府が日本は核戦力を持たなくてもこれを抑止する力があることを示せば、国内の核武装論議の方向が定まり、かつ、いたずらに国際世論を刺激することもない。」と言い換えができましょう。ものごとを易しく言うのは難しい事、田村氏も言論人の一人ですから、易しい文章で書いて頂きたいと思います。



1月6日
 折角の連休ですが、天候は大荒れになるという気象庁の予報が出ています。明日には低気圧が北海道付近で 960ヘクトパスカル台にまで発達するとのこと、今冬に入ってからこのような低気圧の爆発的発達はこれで三回目、活発に暖気が入るためこのような結果になっていると考えられます。このような急速に発達する低気圧を爆弾低気圧と称しますが、そう頻繁に起こることではありませんから、異常と言えるかもしれません。

 政府税制調査会長の辞任、行革担当大臣の辞任と人事で不祥事が続き、安倍政権は末期症状だという声まで出ているところ、新たに松岡農水相に口利き疑惑が出ました。今日発売の週刊朝日のトップ記事は、「囁かれだしたポスト安倍」です。就任 100日でこのような状況に陥るとは困ったこと、政情が不安定になれば内政外交すべて停滞しそうです。

 今日の産経正論は、田久保忠衛氏が安倍総理への年賀状として、歴史的使命へ蛮勇を振るえと檄を飛ばしています。しかし、安倍氏が総理就任後のこれまでの言動を見ると、蛮勇を振るうことができる人柄ではなさそうです。ジリ貧状態を打開するには、君子豹変するしかないのかも知れませんが。ボキャ貧と言われ国語辞典を買い込んだと言われる安倍さんですが、付け焼き刃はいけません。支持率が高かった頃の安倍さんの姿勢を国民は高く買っていたのです。



1月5日
 昨日のNHK 衛星ハイビジョンは、一日クラシックという番組を組んでいました。クラシック好きにはたまらない一日でしたが、考えさせられることがありました。夜に入って、ロンドンで毎年夏に行われるプロムス(世界最大の音楽祭と言われる)が放映されましたが、終わりの1時間程は英国讃歌で盛り上がり、聴衆達は英国旗を広げて打ち振り、ロンドンデリーの歌、庭の千草、ゴッド・セーヴ・ザ・クィーンと続き、締めは蛍の光でした。聴衆達は皆英国に生まれて幸せという顔をしており、期せずして愛国心を盛り上げるものとなっていました。

 これと同じようなことが日本で出来るのだろうか、選ばれるのは「ふるさと」、「赤とんぼ」、そして「君が代」だろうか、聴衆が熱狂して日章旗を打ち振るだろうか、そんな状況はとても生まれそうもありません。

 ウィーン・フィルの恒例の「ニューイヤーコンサート」、これはヨハン・シュトラウスのワルツやポルカなど、ウィーンの伝統的な音楽を演奏することで知られています。ここで最後に演奏されるのはラデツキーマーチです。このマーチは、ハプスブルグ家が統治するオーストリア・ハンガリー帝国、ラデツキー将軍の勝利を祝うもの、オーストリア人にとってはたまらない曲なのでしょう。聴衆は全員がリズムに合わせて拍手するのが伝統です。

 深夜にかけて放映されたメトロポリタン歌劇場 ガラ・コンサート、この冒頭に元ニューヨーク市長ジュリアーニ氏が登場して、このコンサートの紹介をしていました。東京だったら石原氏がこれほど洒脱にやれるのかな、先日死去した青島氏だったらどうなのかなど、ここにも文化の差を感じました。

 このような外国の音楽の催しを通じて感ずるのは、地域、国の文化を愛する心が横溢していることです。東京でも東京音楽祭が夏に行われ、昨年で22回を数えますが、その宣伝文は「今回のテーマは「大地の歌・街角の音楽」。アフリカン・ポップのユッスー・ンドゥール、イラン伝統歌謡のシャハラー.・・」とあり、言わば国籍不明です。

 こんな中で、自衛隊音楽祭は頑張っていますが、チケットの入手が大変困難で、皆が楽しむにはほど遠い状態です。東京ドームででもやって、数万人を集める試みがあって然るべきではないか、と思った次第です。



1月4日
 防衛庁久間長官が普天間へ移設する飛行場について、V字形にこだわらないと述べました。これが常識というもの、V字が提案された時、この欄で知恵者がいるものだと皮肉りましたが、無駄なお金を使う事はありません。世界に恥をさらすようなことはしない方がよろしいでしょう。

 米大統領はイラクへ二万人の増派を決めたと米メディアが報道しました。内戦状態と言われる困難な状況を打開したいという非常手段でしょうが、大丈夫なのかという心配が先立ちます。と言うのは、米軍が深刻な兵員の質の低下に悩んでいるのではないかと思われるからです。

 イラクでの治安悪化をくい止められず、死傷者が増加の一方ですが、それを改善するためのイラクの国民との関係改善が一向に進みません。原因の一つは米兵たちのイラク国民への接し方にあるのではないか、州兵まで動員しての派遣には教育訓練が十分に行われていないのではないか、とい懸念があります。アブグレイブ刑務所における虐待事件、一昨年の米海兵隊員による民間人虐殺事件など教育訓練の不足が顕著に出ていると思いますし、士気の保たれている軍ではあり得ないことです。

 同性愛者まで入隊公認するべきだという声がシャリカシュビリ元統参議長から出ているのは、深刻な兵員不足、それに伴う教育訓練の低下を認めたものと言えましょう。



1月3日
 産経が「主張」で専守防衛の政策を見直すべきだと言っています。冷戦終結後の日本周辺における軍事的環境の激変に備え、防衛体制を再構築するべきだとの主張です。

 専守防衛と言う言葉は、我々防衛に携わった者にとって一種の呪縛のようなものではなかったか、攻撃は駄目という奇妙な思想に汚染されて思考の範囲を狭め、みすみす戦略・戦術的に有利になる筈のところを逃して、これを当然とするところがあります。敵の立場になれば、攻撃される心配がないという何とも言えぬ有利さを享受させ、これが国の方針だからと言うのは自虐思考の最たるものの一つと思います。

 幹部学校教官であった時、指揮幕僚課程の受験者の口頭の答えの中に、専守防衛に凝り固まった意見を述べる者がありました。本心からこう考えているのか、或いは試験官におもねっているのか、分かりませんでしたが、少なくとも軍事を学ぼうとする者は、その本質に迫り、その中から戦略として専守防衛を選択するのであれば分からぬことはありませんが、その受験者はそこまで考えていたか。

 日本の防衛、即専守防衛だという呪縛に雁字搦めになっていてはいけません。自由な発想こそが求められ、そこから柔軟な安全保障政策が発想されるものと思います。



平成19年1月1日
 皆様、明けましておめでとうございます。大晦日は外房に泊まり、初日の出を拝みました。生憎、雲が多くまんまるの太陽は見られませんでしたが、水平線と雲の間に煎餅の形に見える太陽がのぞきました。

 産経掲載の三浦朱門さんと曽野綾子さんの夫妻対談、朱門さんが「いつ殺されるか分からない、財産が奪われるかもしれない、秘密警察に連れて行かれるかもしれない−そんな不安のない国はこれまた少ない。「格差」が言われていますが、今のところ日本は世界的にはベターですね。」と言い、綾子さんが「私は日本はベスト、「ワン・オブ・ザ・ベスト」だと思います。」と言っていることに共感しています。

 三浦夫妻が言っていること以外にも、景色、環境、交通道徳、食べ物等々、他の国々特にアジアの国々と比較して見ると、極めて水準の高い生活を営んでいると言えるでしょう。今、政治家、企業経営者から、若者に至るまでモラルは堕落しつつあると言われています。これではいけないと昨年末に教育基本法が改定され、改善の方向が示されました。今年をモラル復興元年としたいものです。

 江戸末期から明治初期に来日した欧米人達は、日本文化や道徳のレベルの高さに驚嘆したという記録が多々あります。もともと素地は抜群なのですから、自信を持って安倍総理のいうような「美しい国」を作って行こうではありませんか。




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