つばさ川柳112号


長生きも呆けるも勝手自己管理   岩崎 篤子

寅さんへ女もつらいものですよ

祝い事重なる家の大わらわ     上田 将子

ただ涙初めて逢った孫の嫁

年明けりゃ目出度く侘びし米寿来る 大西芙三男

GDP増とは行かぬ我が暮らし

香水も老いの匂いを消す役目    木村  泉

永田町政治の裏という汚名

嫁だけが知ってるワシの誕生日   齋藤 龍男

老いの洒落薄着の果てが玉子酒

駐在所事なく暮れて常夜灯     坂下 邦弘

久し振り碁を囲むのも帰郷の娘

天才のおませ正せば只の人     佐原 利幸

酒だけは断つこともせぬ身の細り

気は若くノミニケーション厭わない 鈴木  至

何処にでもジーパンで行く恥知らず

どちらかが我慢している夫婦箸   末田 洋一

バーゲンに並んで今日も無駄を買う 

歯車がすぐにかみ合う飲む話    竹重 満夫

時々は弱音も吐いて生きている

友愛の文字が宇宙に浮遊する    田所  健

自爆テロ狙い定める神の留守

人の輪が広がるほどに知恵の山   田中 秀穂

老いの知恵早寝早起き脳の冴え

高笑う政治のずるさ目に刺さり   遠山司三郎

国民のためといつもの二言目

金婚で我慢強さを誇り合い     中井  極

エコポイント稼いで増やす廃棄物

お利口な犬で車内にお留守番    蜂巣  徹

日米のそりが合わない民主党

妻だけが我が一生のホームラン   濱野 直道

江戸っ子が子に連れられて二重橋

保護法に手足取られてままならず  藤沼 智弘

禁煙のホームで煙草だけは売り

大記録立てイチローのとぼけ顔   宝納 徳一

ドラマから政治に妻は宗旨替え

マスコミが鳴らす木鐸取り違え   堀内今一歩

妻病んで家事の大事をやっと知り

民主党首絞められるマニフェスト  蒔苗八十八

官僚をリストラする気とは愉快

胸の内言葉足らずで苦労する    若松 靖夫

辛酸をなめ優勝とMVP

頼み事丁寧すぎるから怖い     願法みつる

正直が覇者にもなれるお目出度さ

 

 

課題 『点 線』      みつる選

点と線頭を捻り七日間       八十八

点と線繋いで解いたサスペンス    泉

清張を気取り線引く時刻表      芙三男

点線を実線にする刑事の目     龍 男

点と線波瀾万丈卒寿宴       将 子

老眼に点と線とが霞みがち     邦 弘

過去の点位置が判らず線引けず   靖 夫

点線がいつ実線に新路線      智 弘

折り紙は縦横斜め点や線       徹

点が散り線を結ばぬマニフェスト   至

世に棲んで画布一杯の点と線    秀 穂

点線の雨なら濡れて行こうかな   洋 一   

 点線をたどっていけばマニフェスト  健

 点線のまま残された若き夢      今一歩

 この絆切り取り線か折り線か     極

 点線の余命に未練つきまとい    徳 一

 幸せな点で綴った人生記      直 道       

 トンツーが長い歴史の救命符    利 幸

 冷雨あり電線伝う点の露      司三郎

 飲みすぎの朝点線になる記憶    満 夫

  とぼとぼと歩いた跡に咲く野草    みつる

 

 

課題が「点線」ですから、まさに「点線」が主役なのです。けれども残念ながら「点と線」の二者に視点が流れている句が多かったですね。「線」とは実線ですから「点線」とは異なりますよね。 えっ、そりゃー無いよ・・と不平も聞こえそうですが、でも課題をしっかり捉まえないと、課題句は失敗ですよ。意地悪だったかな。

次号課題は「遠い」。発想をひろげて様々な人生絵図を探して下さい。締切日は二月二十日です。