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 三木会は平成25年7月19日(金)1300〜1400、グランドヒル市ケ谷において、幹部学校長 吉田浩介 空将を講師にお迎えして講演会を開催しました。
 講演内容は、幹部学校と基地の運営についてです。学生教育に当たるとともに基地周辺との共生を図る新たな学校の姿についてご確認下さい。
 


1 まえがき
  平素から幹部学校へのご理解、ご支援を賜りお礼申し上げます。本日は学校運営、基地運営について話をします。

2 学校沿革・規模
  航空自衛隊幹部学校(以下、空自幹部学校)は昭和29年8月に陸上自衛隊浜松駐屯地で誕生し、防府、小平を経て昭和34年に市ヶ谷に移転しました。その後、平成6年、目黒に移り現在に至っており、現在、目黒には空自幹部学校の他、統幕学校、陸自・海自の幹部学校が所在しています。本年8月1日で基地開庁19周年、学校創立59周年を迎えます。卒業生は21,000名を超え、留学生99名を受け入れました。24年度実績で年間517名の学生を教育しています。学校職員は約280名です。


3 幹部学校の現状と課題


















 幹部学校の教育体系、特に統合教育の体系についてご説明します。平成18年より統合運用が始まると同時に、幹部学校における教育も統合教育に移行しました。陸・海・空の指揮幕僚課程では当初の約5週間、統幕学校で統合運用に関する教育を受けます。幹部高級課程は期間が半分となり、空自幹部学校で約半年間(25週間)教育を受けた後、統幕学校の統合高級課程に入校します。また、幹部高級課程間においても、当初の6週間、合同統合教育を受けます。防研一般課程(44週間)の場合は、入校前に統幕学校における4週間の統合短期課程に入校します。このように、幹部は、育成の過程で必ず統幕学校で統合教育を受けることになっています。

 その他の課程として、幹部特別課程があります。これは平成13年に航空兵器課程が廃止されてできたもので、学生は2佐、3佐で、期間は約10週間、教育内容も基地の運営に係わることに限定しており、演習も基地警備、航空事故の対処、記者会見等のメディアトレーニングなどを実施しています。航空団司令部の部長、分屯基地司令に補職される要員の補職前教育的な役割を担っています。



4 目黒基地の現状と課題

目黒区のイベントにボランティアとして参加
 入間基地部隊研修
 体験入隊の受け入れ

  東日本大震災の時、首都圏では帰宅困難者が多数出ました。東京都は役所、学校など、多くの公共施設を開放し、企業やレストランも可能な支援を行い、中には食事を出したところもありました。目黒基地は態勢を取りましたが、結果として何の支援もできませんでした。そもそも自衛隊の存在も知られておらず、また、基地として何を行うのかも決まっていなかったことなどが背景にあったと分析しています。首都直下地震が数年間のうちに高い確率で発生することが予期される中、早期に基地機能を充実させていく必要があるとの問題意識から、基地として防災対処能力の充実、強化を図っています。また、初の試みとして昨年の創立記念行事には協力関係諸団体(隊友会、父兄会、防衛協会)の方々を招待したり、目黒区のイベントにボランティアとして隊員を参加させたり、部外協力者の入間基地部隊研修を計画したり、体験入隊を受け入れる等の取り組みを実施し、周辺地域や協力団体とのつながりの構築に努めているところです。


5 ドクトリン策定の背景と今後の方向性

  今、国際的な安全保障環境は変化の真っただ中にあります。大規模戦争の蓋然性は低下する一方で、民族・宗教対立等による地域紛争に加え、領土や主権、経済権益等をめぐり、武力紛争には至らないような対立や紛争、言わばグレーゾーンの紛争が増加する傾向にあります。これに合わせて、軍事力は、平和維持活動や人道支援・災害救援等での活用の機会が増大し、その役割は拡大しつつあります。このため、我が国の今後の防衛力の役割については、各種事態へのより実効的な抑止及び対処を可能とし、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善のための活動を能動的に行い得るものとしていく必要があります。これまで航空自衛隊は、明確かつ限られた役割の中で的確に任務を遂行してきましたが、防衛力の役割が拡大するにつれて、任務に対する組織としての考え方をとりまとめ、明示する必要性がより強く認識されるようになってきました。
 このような背景の下、航空自衛隊は平成17年度からドクトリン開発に着手し、平成22年度末に航空自衛隊基本ドクトリンを制定しました。現在、下位のドクトリンの基礎研究に着手しています。基本ドクトリンは、防衛力
の役割が拡大していく中で、航空自衛隊が的確に行動するために準拠とすべき考え方を述べたもので、航空自衛隊の戦い方の原理原則を書いた指揮運用綱要の解説版といったイメージです。また基本ドクトリンは、武力紛争、軍事力、航空戦力、抑止力、航空防衛力整備、作戦区分(統合、共同)、指揮統率、組織基盤などの概念を中心に構成されています。下位ドクトリンでは、部隊行動、指揮統制、戦力造成などに区分して、内容をブレイクダウンしていく予定です。基本ドクトリンの内容は5〜6年で見直しを予定しており、また平成26年度設置(予算要求中)の幹部学校航空研究センター(仮称)で維持していく予定です。


6 幹部学校航空研究センター(仮称)構想

  防衛力の役割及び航空自衛隊を取り巻く環境の変化に対応し、将来にわたり各種事態に的確に対応し得る航空防衛力の整備・運用に資する研究態勢を構築するため、幹部学校航空研究センター(仮称)を平成26年度中に新設すべく予算要求しているところです。具体的には、幹部学校研究部を母体として、航空教育集団司令部教育部研究課及び各術科学校研究部を整理し、幹部学校航空研究センター(仮称)に部隊の運用等に関する調査研究機能を集約するとともに、幹部学校研究部、航空教育集団司令部教育部研究課及び各術科学校研究部のうち、教育訓練に関する調査研究機能については、幹部学校教育部、航空教育集団司令部教育部計画課及び各術科学校第1教育部にそれぞれ移管していきます。新設する幹部学校航空研究センター(仮称)には、研究の企画管理、ドクトリンの研究、戦略理論の研究、事態対処の研究(教訓の収集)の機能が付与されるほか、外部に対する情報発信の機能も持たせる計画です。

7 最後に

  航空自衛隊の最高学府として、実効的な対処力を備え、活力に溢れ、強い絆で結ばれた現場を構築してくれる、頼もしく、かつ逞しい幹部自衛官を育成するとともに、将来の航空自衛隊を担う人材の育成に、今後も最大限の努力を傾注していく所存です。また、基地設置の目的に立ち返り、目黒に航空自衛隊があって良かったと言われるような基地を目指して、更に尽力しますので、御支援、御協力をお願いし、話を終わります。