1 はじめに
つばさ会の皆様には、全国の部隊において日頃から航空自衛隊の様々な活動を支援していただいていることに感謝申し上げます。
今日は貴重な機会を与えていただきましたので、予算の執行機関である補給本部の業務の概要を紹介するとともに直面している課題などについても話をしたいと考えています。つばさ会には防衛関連企業で勤務されている方が多いので、業務の参考としていただければ幸甚です。
2 後方関連予算の現状
(1)予算の推移
本年3月28日に平成28年度の政府予算が成立しました。一般会計の総額は前年度当初予算比で0.4%増の96兆7,218億円となり、4年連続で過去最大を更新しました。また防衛費は米軍再編関係費やSACO沖縄に関する特別行動委員会関係費などを含めて5兆541億円となり、初めて5兆円を突破し、前年度に続き過去最大規模となりました。
航空自衛隊の予算は契約ベース(一般物件費と新規後年度負担)で8,314億円となり、前年度に次ぎ2番目の規模となる予算を確保できました。そのうち後方関連予算は執行実績の反映などにより過去最高となる5,700億円を確保できました。施設整備関連予算を除くと5,363億円となります。
その内訳は新規後年度負担が増加しているため、一般物件費は1,448億円と横ばいの状態となっているのが現状です。

(2)輸入・国産比率の推移
契約ベースの予算に占める輸入の割合は24年度予算で1,422億円、21%であったものが、28年度では3,408億円、41%となっており、5年間で倍増しました。一方で国産の割合は24年度予算で5,384億円79%であったものが、28年度では4,906億円59%となっており、約20%減少しています。
(3)為替の影響
予算に占める輸入の割合が増加していることに加え、近年は為替が大きく円安に振れたため、27年度は約260億円の為替差損が発生しましたが、これを追加財政措置により補填されているのが現状です。
為替の影響を直接的に受けるのが油購入費等ですが、原油価格の低下も加わり、27年度は約140億円を執行することができませんでした。
(4)予算の構造
予算の規模については既に述べましたが、次に予算の構造について説明します。28年度の空自歳出予算のうち歳出化経費、いわゆる付け払いが半分を占めています。加えてその新規後年度負担の構造が歪となっていることが28年度予算の特徴と言えます。具体的には施設整備関連予算を除く後方関連予算の2国予算が対前年度比で約20%の491億円減額の1,917億円であり、自衛隊創設期以来の過去最低額となりました。他方、3国以上の予算が388億円増額され1,998億円と大幅に増加しています。このような歪な予算は29年度以降の歳出及び2国予算を圧迫することとなり、空自として大きな課題となっています。
(5)部隊支援の現状
後方活動の基本は、支援対象年度までに必要な構成品を取得または修理し、補給処の保管倉庫に保管しておくことです。制度的に安全在庫が認められており、部隊活動の変更や部品の異常消費に対応できるようになっていますが、そのための予算が伸び悩んでおり、加えて様々な理由により交換部品が準備できないために一部の航空機が非可動となっています。

3 予算の執行状況
(1)執行状況
補給本部は予算の執行機関であり、補給本部が中央調達に係わる調達要求を行うとともに、管理下補給処が地方調達を行っています。27年度の実績を例に取れば、中央調達として要求件数1,832件、要求金額5,026億円を要求しました。その内、FMS契約は76件、2,281億円となっています。
各補給処が実施する地方調達として執行額は2,801億円で、その内訳は第2補給処が1,053億円、第2補給処十条支所が613億円、第3補給処が694億円、第4補給処が441億円となっています。
(2)不用額の推移
中央調達及び地方調達ともに殆どの契約、特に修理契約は概算契約であり、精算という行為が必ず生じます。また精算した結果、多くの場合残余の予算が発生します。残余の予算が早期に判れば、再執行、あるいは追加執行としてその予算を活用して他の部品の取得や修理ができますが、制度上有効活用できない予算が発生することは不可避です。この執行出来なかった予算を不用額と称しています。
平成22年に発生した第1補給処官製談合事件の再発防止策として様々な措置が講じられ、そのうちの1つとして予算を使い切る意識が見直されました。その結果、年度末の執行が過度に抑制され、結果として多額の不用額を発生させたと考えています。油購入費等の制度上、再執行が不可能な経費を除くと、不用額のピークは平成23年度の547億円で、そのうち後方関連経費は365億円でした。
予算を有効に活用する観点から24年度以降、空幕、補給本部、補給処が一体となって努力を積み重ねてきました。例えば、早期の契約・精算により、残余の予算を再執行(追加執行)してきました。再執行の27年度実績は歳出予算で20億円、国庫債務負担行為予算で80億円でした。あるいは明許繰越制度を積極的に利用してきました。23年度に17件15億円であった明許繰越が、25年度から航空機修理費に初めて適用し47件144億円に、27年度には38件84億円にまで拡大しています。
結果として後方関連予算における再執行可能な27年度の不用額は26年度の94億円を更に上回る24億円程度と見込まれています。
4 補給本部の組織改編
補給本部の司令部機能と装備品単位の管理を強化する目的で28年度予算において編成要求していた補給本部の内部組織見直しが査定され、秋を目途に補給本部は改編を予定しています。具体的には補給本部第1部から第4部を整理し、航空機部、武器弾薬部、通信電子部及び需品部(いずれも仮称)という装備品別の部を新設します。航空機搭載通信電子機器に関わる業務と予算は航空機部が一元的に統制することが可能となりました。また、メジャーコマンドである補給本部の司令部機能を果たすと共に運用部隊である他のメジャーコマンドとの窓口となる補給本部計画部企画課を強化します。

これにより航空総隊等の運用ニーズに迅速かつ的確に対応すると共に、予算を有効活用しつつ、最も効率的かつ効果的に可動装備品を確保することができる態勢を構築することが可能となると確信しています。
昭和56年に補給本部が発足して以来の大きな改編であり、様々な課題を抱えつつも果敢に挑戦を続け、確実に部隊の活動を支援することができ、かつ信頼される補給本部を構築しようと考えています。
5 おわりに
わが国を取り巻く安全保障環境は益々、厳しさを増大させており、補給本部としては航空総隊をはじめとする部隊と連携を密にし、後方の中枢として管理下補給処をしっかりと掌握・指導し、しっかりと部隊の活動を支援していく所存です。
つばさ会の皆様におかれましては、航空自衛隊の置かれている厳しい状況をよく理解していただき、引き続き支援していただくことをお願いし、話を終わらせていただきます。ご静聴に感謝申し上げます。
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