ニュース2012年5月9日



来月にも最初の4機契約=F35売却で日本政府と−米国防総省


 5月9日付のワシントン発時事は、「米国防総省のF35開発担当責任者のベンレット海軍中将は8日の上院軍事委員会の公聴会で、日本政府が次期主力戦闘機(FX)として導入を決めたF35について、日本政府が調達する最初の4機分の売買契約を6月にも日本政府と正式に交わすとの見通しを明らかにした。また、4機の引き渡し時期について2016年に始まると述べた。日本政府はF35を計42機購入する予定で、最初の4機について17年3月末までの引き渡しを求めていた」と、伝えました。

 記事は続けて、「ベンレット中将は今夏に最初の4機分を有償軍事援助(FMS)で日本に輸出する契約書を交わす見通しだとした上で、「6月にも両政府が契約書に正式署名することを期待している」と語った。
 また、日本政府が今年2月1日、F35調達に関して、日本企業の生産への参画形態や導入後の教育訓練、機体の整備方法などの研究費として、総額600万ドル(約4億8000万円)を米政府に支払う契約に署名したことも明らかにした。 
 このほか、機体に搭載するコンピューターソフトの最終型「ブロック3」の試験は16年末までに終えると説明した。
 同中将は議会内で8日記者団に、日本が調達する42機の総額が推計100億ドル(約8000億円)になると米議会に報告したことについて、「日本政府にも十分説明しており、(見積額は)日本を驚かすことにはならない」と強調した」と伝えています。



 併せて、記事は途中で「ただ、F35は開発途上にあり、完全な戦闘能力を備えない未完成機が納入される可能性がある」と明確な根拠があるとも思えない表現も織り込んで記載しており、意図的なものを感じます。「完全な戦闘力を備えない未完成機」とは何を意味するのか、それはF35全般に言えるのか、日本が購入しようとするF-35Aにも言えることなのか、その当たりの肝心なことは不明です。たぶん、記者も分かって書いているわけではないでしょう。



 記事によれば、米国政府を甲とし、日本政府を乙として契約が締結されるようです。「売買契約」とありますので、完成品として納入されますが、納地は不明です。庭先渡しで、日本のパイロットがフェリーするのでしょうか。さてその機体が着陸する部隊はどこになるのでしょうか。その基地では受け入れの準備が徐々に始まるはずです。整備機材や運用関連資材の受け入れも始まります。意外にも米国が納地のまま現地で訓練が開始されるかもしれません。F-35は、ネットワーク対戦型の機能に特徴があります。米国、あるいは他の国との連携要領も含めた訓練が開始されるかもしれません。「違う、今までの機体と違う。」とパイロットが感じたときから、新たな運用方法も始まるのかもしれません。

 日本の企業三社の参画については、まだ具体的にはなっていないためか、「研究費」の扱いになっています。日本での最終組み立てや検査については、何号機から開始されるのか、修理の形態はこれまで通りIRAN方式によるのか等、企業の期待とは裏腹にまだまだ未知の部分が多いようです。さらに、今後、研究開発に参画し、装備品の生産、輸出にまで持って行けるかは、まさに今後の推移次第と言わざるを得ないようです。国産戦闘機自主開発の期待は絶えずありますが、彼我の実力差はなかなか縮まらないようです。




関連URLも参照してください(画像あり)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012050900128&j4


参考
 FMS調達
 FMS調達は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」に基づいて、装備品等及び役務を日米両政府間の直接取引によって調達するものです。この調達においては、取引の条件、手段等について、米国政府の方針、規制等に従って定められており、一般的な商取引による契約とは性格を異にしています。
 以上、裝施本「II 装備品等及び役務の調達業務」より
 http://www.epco.mod.go.jp/gaikyou/chapter2-3/chapter2-3.html