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カンボジア見聞録


                            H28.10.13
 新シリーズ
 カンボジア見聞録 27(隣国との国境)

                       カンボジア在住
                       柴田幹雄

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3 タイとの国境係争地 プレアビヒア寺院(続き)
 1959年カンボジアはプレアビヒア寺院の帰属、タイ警備兵の撤退などを求め国際司法裁判所へ提訴した。判決はカンボジア側の主張を認めるものであった。その理由の最大のものは、分水嶺原則に関わらずフランスの作成した地図には寺院がカンボジア領になっていたことに対し、何度か意義を唱える機会があったにもかかわらず受け入れていたことだった。また1930年シャムのダムロン王子がプレアビヒアを準公式訪問した際受け入れ接遇したのはフランスであったことから、タイ側がプレアビヒア寺院をカンボジア側と認めていたことが根拠とされた。日本もいくつか島の帰属で係争、問題を抱えているが何かあれば必ず抗議をし、地図、教科書記述などで日本の主張を明確にし続けることが重要であることがわかる。
 プレアビヒア寺院そのもの帰属は明らかになったがその周辺地域の帰属は相変わらず不明確なままで、寺院の世界遺産登録でまた火を噴いた紛争だが両歩み寄りで現在は国境警備の要員のみを残し撤兵した。一応平穏に見えるがいまだに国境は確定していない部分がある。プレアビヒアの高台の近くのカンボジア側に地雷処理をしている現場があり、視察に行き、ついでに寺院も訪問した。

 右の図は手書きの要図で、各種の資料と記憶を頼りにしたものだから必ずしも正確ではないが全体の様子はわかると思う。寺院が南北約800mにわたって延びている。寺院の敷地はタイもカンボジア側と認めているもののその周辺はいまだ図で解るように認識が一致したものではない。寺院に行くには観光事務所で有料のピックアップトラックで駐車場まで乗っていく。おそらくその道路や台上の駐車場はタイ側が自国領と主張している範囲に入っている。

 駐車場には土産物や飲み物を売っている店が2〜3軒あり、お供え用の花売りの娘などもいる。面白いのはそのすぐ隣に、タイ側の凹地を見下ろせる場所に警備用の掩蓋陣地が並んでいる。又陣地の脇には小屋があっておそらく警備兵が休憩するためのものだろう。家族と思しき母子と制服でのんびりしている兵士もいる。平素からそういう警備体制なのか、非番で休憩しているのかはわからないが、あまり緊張した様子ではなかった。

 要図でAK47と書いた場所は、AK47自動小銃を近くの木に架け、その脇でしゃがんで湧き水で洗い物をしている隊員を見た場所。つい「武器 は常に携帯し体から離すな」と指導したくなった。いずれにせよこの辺りはタイ側が自国領だと主張している場所なのにのんびりしたものだ。



 左はプレアビヒア寺院の遺跡の写真で、一番南の本殿の一角である。石造りの典型的ヒンドゥー教寺院。本殿は駐車場のあたりからここまで五つの 塔門を経て上ってきた一番高い南端にある。



                      つづく

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