つばさ会トップ
★次回講演会
三木会過去記事
H31.04.17
H31.01.22
H31.01.21
H30.10.22
H30.09.18
H30.04.09
H30.04.06
H30.01.19
H29.12.19
H29.10.30
H29.10.20
H29.07.11
H29.05.11
H29.01.19
H28.12.09
H28.10.20
H28.07.21
H28.06.16
H28.04.20
H27.04.15
H26.10.15
H26.07.18
H26.04.16
H25.10.22
H25.01.17
H24.10.18
H24.07.20
H24.04.19
H24.01.19
H23.10.20
H23.07.21
H23.01.20
H22.10.21
H22.07.15
H22.04.15
H22.01.21
H21.10.22
H21.07.16
H21.05.21
H21.01.15
H20.10.16
H20.07.17
H20.05.15
H20.01.17
演題:「平成31年度航空自衛隊業務計画及び予算(案)の概要について」
空幕防衛課長 1等空佐 尾山 正樹
空幕会計課長 1等空佐 田崎 剛広
平成30年度第4回目の講演会(三木会)を平成31年1月17日(木)グランドヒル市ヶ谷において開催した。今回は空幕防衛課長の尾山正樹1佐と空幕会計課長の田崎剛広1佐に「平成31年度航空自衛隊業務計画及び予算の概要」という演題でご講演を頂いた。内容としては、昨年末に策定された防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の概要と31年度予算についてであった。
講演終了後、外薗会長から本講演に対する謝辞と大綱・中期防の具体化は大変だと考えられるが頑張ってほしいとの激励の言葉が述べられた。
紹介を受ける両講師、左:防衛課長、右:会計課長
「平成31年度航空自衛隊業務計画の概要」 防衛課長 尾山1佐
1 新たな防衛大綱に基づく航空自衛隊の取り組み
(1)航空防衛力が直面する課題
我が国を取り巻く安全保障環境は、25大綱策定時の想定よりも格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増している。また、様々な国が宇宙や電磁波領域での軍事的活動を活発化させている。
【宇宙・サイバー・電磁波領域における脅威】
近年、周辺国による対衛星兵器の開発は、宇宙空間の安定的利用に対する深刻な脅威となっている。また、サイバー及び電子戦能力の高度化も大きな課題となっており、特に周辺国の一部は、電子戦とコンピュータネットワークの運用を融合して相手の情報システムを攻撃するといった戦略を打ち出している。これらの脅威は、自衛隊の戦力発揮に不可欠な、戦闘情報ネットワークを妨害する能力があり、それらに対応する能力を保持する必要がある。
【同時・複合的な弾道・巡航ミサイル脅威】
武力攻撃事態における、弾道・巡航ミサイル等による同時・複合的な攻撃は、重大な脅威である。また、弾道ミサイルのみならず、周辺国の巡航ミサイル及び戦闘機等の質的・量的拡大を踏まえるとこれらのミサイルによる、いわゆる飽和攻撃に如何に対処するかということは、喫緊の課題である。
(2)新たな防衛大綱に基づく航空自衛隊の取り組み
【領域横断作戦】
厳しさを増す安全保障環境の中で、軍事力の質・量に優れた脅威に対する実効的な抑止及び対処を可能とするためには、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域と陸・海・空という従来の領域を横断する戦闘様相に適応することが死活的に重要になっている。新たな領域を活用して、相手の能力発揮を防ぐとともに、全能力を有機的に結合して我の能力を増強し、彼我の能力差を縮減することにより、我が国の防衛を達成させる。
【航空自衛隊の将来体制の方向性】
戦闘機部隊は、機数を確保しつつ質的強化をしていく。Fー4の後継機としてFー35Aを選定しており、42機の導入を継続していく。Fー15(非近代化機)については、能力の高い戦闘機、Fー35Aの増勢により代替するとともに、STOVL機を新たに導入して代替していく。Fー15(近代化機)については、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイル搭載等の能力向上を実施していく。将来戦闘機については、将来のネットワーク化した戦闘の中核となる役割を果たすことが可能な戦闘機の確保に向け、必要な研究を推進するとともに、国際協力を視野に、我が国主導の開発に早期に着手することを目指していく。
【安全保障協力の強化(空自の方針)】
新たな大綱を踏まえ、以下の三点を重視していく。@日米同盟を基軸とし、普遍的価値や安全保障上の利益を共有する国々との二国間・多国間協力を効果的・効率的に推進する。A他自衛隊、他省庁、米国及び友好国が実施する各種活動と有機的に連携し、戦略的に発信する。B航空防衛力の特質を活かし、主体的かつ積極的な活動を実施する。
2 平成31年度空自予算の考え方
平成31年度は、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成30年12月18日閣議決定)に基づく「中期防衛力整備計画(平成31年度〜平成35年度)」(平成30年12月18日閣議決定)の初年度として、多次元統合防衛力の構築に向け、防衛力整備を着実に実施する。
領域横断作戦を実施するため、優先的な資源配分や我が国の優れた科学技術の活用により、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を獲得・強化する。また、領域横断作戦の中で、新たな領域における能力と一体となって、各種事態に効果的に対処するため、海空領域における能力、スタンド・オフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、機動・展開能力を強化する。さらに、平時から有事までのあらゆる段階において、必要とされる各種活動を継続的に実施できるよう、後方分野も含めた防衛力の持続性・強靭性を強化する。
加えて、少子高齢化等の厳しい環境も踏まえた人的基盤の強化、軍事技術の進展を踏まえた技術基盤の強化等に優先的に取り組むとともに、安全保障環境の変化を踏まえ、日米同盟・諸外国との安全保障協力を強化する。
この際、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化する。また、既存の予算・人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分し、効果的に防衛力を強化する。また、厳しさを増す財政事情と国民生活に関わる他の予算の重要性等を勘案し、我が国の他の諸施策との調和を図りつつ、調達の効率化にかかる各種取組等を通じて、一層の効率化・合理化を徹底する。
3 主要事業の概要
(1)領域横断作戦に必要な能力の強化における優先事項
【宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力の獲得・強化】
宇宙状況監視システムとして、Deep Space監視用レーダー及び運用システムを取得する。宇宙空間の安定的な利用に係る調査研究を行う。作戦システムセキュリティ監視装置を整備する。Fー35Aの6機取得及びFー15の2機改修を実施する。自動警戒管制システムに部隊等が保有する電子戦情報の共有・処理能力の向上を付与する。
【従来の領域における能力の強化】
RQー4Bグローバルホーク1機の機体組立て経費等を計上する。Eー2Dを一括調達により9機取得する。Eー767の機体改修を1機実施する。警戒航空隊を警戒航空団(仮称)に格上げする。Fー35Aの6機取得及びF―15の2機改修を実施する。戦闘機部隊等の体制移行を実施する。スタンド・オフ・ミサイル(JSM)を取得する。ペトリオット・システムのバージョンアップ改修及び所要のPACー3ミサイルを再保証する。Cー2を取得する。
【持続性・強靭性の強化】
航空優勢の確保、脅威への有効な対処能力を有する弾薬を整備する。分散パッドの整備に着手するとともに、滑走路被害復旧器材を取得する。自衛隊施設の老朽更新を行う。
(2)防衛力の中心的な構成要素の強化における優先事項
【人的基盤の強化】
隊員の生活・勤務環境改善のための備品や日用品等を整備する。女性隊員のための施設を整備する。庁内託児施設の備品等を整備するとともに、緊急登庁支援(児童一時預かり)のための備品を整備する。男女共同参画推進集合訓練等を行うとともに、女性活躍紹介・両立支援ハンドブック等の作成・配布する。第一線の救護能力向上のための教育器材等を整備する。自衛隊病院の集約化に伴う自衛隊入間病院(仮称)建設のための本体工事を行う。感染症患者搬送態勢の確立のための現地調査を行う。
(3)大規模災害等への対応
【災害対処拠点となる駐屯地・基地等の機能維持・強化】
耐震化・津波対策の促進をするとともに、災害対処拠点地区等を整備する。
(4)安全保障協力の強化
【インド太平洋地域の安定化への対応】
防衛協力・交流を推進し、その中でミクロネシア連邦等における日米豪人道支援・災害救援共同訓練を実施する。
【グローバルな安全保障課題への適切な対応】
多国間訓練へ参加するほか、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のため、Cー130H等による航空輸送を行う
(5)防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策に基づく措置
耐震化対策及び老朽化対策に係る施設を整備する。
(6)効率化への取組
長期契約を活用した装備品等及び役務の調達により、縮減額356億円、維持・整備方法の見直し等により、縮減額559億円、費用対効果の低いプロジェクトの見直しにより縮減額1,029億円を見込んでいる。
4 編成事業の概要
【平成31年度編成事業
各種事態における実効的な抑止及び対処等に対応するため、各種部隊改編関連事業等を実施する。
【自衛官定数】
前年度から13名減の46,923人となる。
【自衛官実員】
南西域における防衛態勢及び周辺海空域の防衛態勢等の充実・強化を図るため204人の実員を増員する。
「平成31年度航空自衛隊予算の概要」 会計課長 田崎1佐
5 予算編成経緯
平成31年度予算編成については、昨年度とその過程に大きな違いはなく、昨年度と同様の日程で進められたものの、本講演後、毎月勤労統計で不適切な調査があった問題を受け、1月18日に概算の変更に関する閣議決定が行われた。また、平成30年度補正予算については、1次補正が10月15日に政府案閣議決定し、11月7日に成立するとともに、その後2次補正が12月21日に政府案閣議決定された。
【概算要求まで】
昨年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2018」いわゆる「骨太の方針」が閣議決定された。また、7月には「概算要求に当たっての基本的な方針」が閣議了解され、概算要求基準が示された。防衛省は、昨年度同様、概算要求基準の上限額内で概算要求を行った。その結果、防衛関係費の概算要求については、歳出予算が対前年度1,075億円増の5兆2,986億円となった。(SACO関係経費、米軍再編経費のうち地元負担軽減分(以上、事項要求)及び新たな政府専用機導入に伴う経費を含む。)
【政府予算案決定まで】
10月24日に開催された財政制度等審議会で議論された防衛関係費の主要課題は、調達改革の一層の強化であり、31中期防期間中においては、原価監査の徹底等により29年度、30年度以上の合理化効果が求められた。
そして、財政制度等審議会で議論された防衛関係費の主要課題がそのまま財務省との折衝上の大きな焦点となり、航空自衛隊は、装備品の原価を精査する等の努力を示して財務省の理解を得つつ、概算要求した装備品等の数量確保に努めた。
その後、概算要求していた一部の事業のうち、急を要するものを対象に前倒しで平成30年度第2次補正予算に計上される等、平成31年度予算は、平成30年度補正予算と同時並行的に編成作業が進められ、いずれも12月21日に政府予算案として閣議決定された。
(但し、冒頭で述べたとおり、翌1月18日に概算の変更がなされている。) こうして策定された平成31年度予算のポイントとして、財務省は、ホームページ上で次のとおり言及している。
@一般歳出、社会保障関係費の伸びについて、経済・財政再生計画の目安を達成、国債発行額を前年度から縮減。A中期防対象経費は、+1・4%を確保し、防衛関係費全体としても+0・3%を確保した上で、防災・減災・国土強靱化のための3か年緊急対策における「臨時・特別の措置」として、508億円を措置し、+1・3%を確保した。B調達改革等により4159億円の縮減を実現。
これらのことから、歳出予算の自然増を抑制する等、財政健全化に向け徹底した歳出予算の見直しが行われる中、防衛関係費については一定の伸びが認められる等、昨今の安全保障環境を踏まえ防衛関係費への予算配分が重視されたものと考える。
6 経費の概要
【平成31年度防衛関係費(案)】(表一)
以下においては、SACO関係経費、米軍再編経費のうち地元負担軽減分、新たな政府専用機導入に伴う経費及び防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策に係る経費を除いた中期防対象経費について説明する。歳出予算は、対前年度682億円増の5兆70億円で、対前年度伸び率は+1・4%となった。
歳出予算の内訳として、人件糧食費は、対前年度19億円減の2兆1831億円、歳出化経費は、対前年度841億円増の1兆8,431億円、一般物件費は、対前年度141億円減の9,808億円となった。
また、新規後年度負担については、対前年度4,074億円増の2兆4,013億円となった。
(表一)
【平成31年度航空自衛隊予算(案)】(表二)
歳出予算は、対前年度652億円減の1兆1,012億円で、対前年度5.6%の減となった。歳出予算の内訳として、人件糧食費は、対前年度42億円増の4,060億円、歳出化経費は、対前年度608億円減の5,389億円、一般物件費は、対前年度85億円の減の1,562億円となった。
また、新規後年度負担については、対前年度2,312億円増の9,041億円となり、一般物件費と新規後年度負担を合わせた契約ベースでは、対前年度2,227億円増の1兆603億円となった。
(表二)
【平成30年度航空自衛隊第1次補正予算】(表三)
内訳として、自衛隊の部隊が実施する災害派遣活動等に必要な経費として、8億円、そして、自衛隊施設等災害復旧に必要な経費として、18億円がそれぞれ計上され、計26億円となった。(全て歳出ベース)
(表三)
【平成30年度航空自衛隊第2次補正予算(案)】(表四)
内訳として、防災・減災・国土強靭化のための3か年緊急対策に基づく措置として、13億円、自衛隊の安定的な運用態勢の確保として、2411億円、(以上、歳出ベース)及び隊員の生活・勤務環境の改善として、203億円(契約ベース)がそれぞれ査定され、計2434億円(歳出ベース)となった。
(表四)
【航空自衛隊予算案の総括】
総括すると、概算要求以降、装備品等の単価低減努力などにより減額となった経費はあるものの、概算要求したものは、安全保障上の必要性から、平成30年度補正予算に前倒して計上されるか、又は平成31年度予算に計上されるかのいずれかとなった。
また、概算要求以降、E-2Dが追加で認められるなど、結果として、平成31年度予算案については、新防衛大綱及び中期防の初年度として、多次元統合防衛力を着実に構築していくことができる内容となった。
講話を聴講する会員
「その他」
平成31年度予算は、平成31年3月27日、政府案通り成立しています。
平成31年度予算の概要は
こちら
からご覧下さい。