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演題:「空自の人事教育等施策」

  空幕人事教育部長 井筒 俊司 空将補

 平成29年度第1回目の講演会(三木会)を、平成29年4月20日(木)グランドヒル市ヶ谷において開催しました。
 今回は空幕人事教育部長の井筒俊司空将補に「空自の人事教育等施策」という演題でご講演を頂きました。
 講演終了後、吉田会長から本講演に対する謝辞が述べられました。












■募集状況について
(1)新隊員募集
 少子化の傾向は続いており、募集対象者は平成6年のピーク時の約900万人から、現在では約560万人と40%近い減少となっています。平成31年以降も毎年1万人ずつ減少していく見込みです。また、リーマンショックで有効求人倍率は平成21年に底打ちしたものの翌年以降、右肩上がりとなっていることから、今後、更なる志願者の減少が予測されます。
 航空自衛隊は、陸・海上自衛隊に比べ、募集は比較的良好な状態ですが、「空飛ぶ広報室効果」でピークだった平成25年からは、志願者数は漸減傾向です。
 厳しい募集環境が続きますが、航空自衛隊の健全性と精強性を維持向上するため、優秀な人材確保に努力しているところです。少子高齢化は我々の力ではどうすることも出来ません。そのような中で、むしろ航空自衛隊が最も働きたい仕事のベスト50として雑誌等で紹介されるようになればと、密かに考えているところであります。
(2)予備自衛官制度
 予備自衛官制度は陸海空とも実施していますが、即応予備自衛官制度は陸のみ、予備自衛官補は陸と海のみとなっています。
 予備自衛官補は教育訓練を修了した後、予備自衛官としての登録が可能であります。
 将来的に基地での航空機整備等を部外委託とし、従事する会社員を予備自衛官にできないかという話もありますが、予備自衛官は退職自衛官が対象です。従いまして、会社員をそのまま予備自衛官に指定することはできませんので、将来的には民間人を予備自衛官補として登録し、教育訓練を経て予備自衛官にした上で、基地での航空機整備等に従事させることも検討しなければならないと考えます。
 予備自衛官は、かつてはいわゆる元職管理(現職時の職種で管理)でした。したがって高射運用の幹部でも、ナイキしか知らない者が、ペトリの部隊で勤務するということがありました。このような不具合を改善し、予備自衛官をより有効に活用するため、平成27年に規則を改正し、佐官予備自衛官は司令部等の幕僚として、准曹士の予備自衛官は、2任期目以降は基地機能維持の職務に勤務させるようにしました。そのための新たな職務訓練を昨年度以降、実施しております。

■人的戦力強化施策について
(1)人的戦力強化推進要綱
 組織の礎は人であり、隊員の団結や絆、帰属意識が航空自衛隊を精強にするという杉山空幕長の強い信念もあり、まずは空自の人的資源の大部分を占める准曹士の人的戦力の強化施策を策定しました。引き続き、幹部の強化施策も昨年度末に策定し、部隊に通知をしたところであります。これらは「隊務運営の心得」を基本としたものであり、幹部及び空曹士の行動規範について示しています。特に幹部は、指揮階層にこだわらず、先輩幹部が後輩幹部を教育・薫陶することで、若手幹部の識能向上を図ろうとしているところです。
(2)レジリエンス教育
 空自隊員の、強くしなやかな折れない心を作るため、レジリエンス教育に取り組んでします。いわゆる強い心の育成ですが、ストレスに負けない、跳ね返すというよりも、逆境や困難に耐え、回復し、成長するという柔軟さや前向きさがレジリエンス教育の特徴です。
 レジリエンス教育は、
 @心理的レジリエンス、
 A身体的レジリエンス、
 B社会的レジリエンス(コミュニケーション)、
 C精神的レジリエンスの4つの柱から成り立っています。
その中で比較的人気があるのが「社会的レジリエンス」の「アンガー・マネジメント」です。これは絶対に怒ってはいけないというものではなく、怒りに振り回されて損することがないようにコントロールするというものです。不必要に怒らないためのテクニックとも言えます。
 今年度中に教育資料を整えるのと同時に、教官を育成し、来年度から本格的な教育を実施したいと考えています。

■男女共同参画推進等施策について
(1)女性自衛官の活躍の歩み
 男女共同参画については、昨年の自衛隊高級幹部会同における安倍内閣総理大臣の訓示でも強く言われています。これを受け、政府・省全体で働き方改革や育児介護等と両立して活躍できるための施策に取り組んでいるところであります。
 航空自衛隊においては昭和49年の婦人自衛官採用開始以来、平成22年には空自初の女性の基地司令、平成24年には空自初の女性の飛行隊長が誕生しております。一昨年の平成27年には、女性の戦闘機等への配置制限が解除されました。そのような航空自衛隊の女性自衛官の数は、約3、000名であり、平成41年度には4、500名体制(約10%)までの増勢を考えております。
(2)航空自衛隊男女共同参画等推進のための主要施策
 施策は@女性隊員の活躍のための取り組み、A育児・介護等と両立して活躍できるための取り組み、B働き方改革、C意識改革の4つの柱からなっています。特に最後の意識改革は、4つ目の柱というより、施策全体にかかる基礎ともいえます。
 杉山空幕長も、男女共同参画は「できたらいいな」ではなく「必ずやらなければならない」ものであると常々指導をされています。
 男女共同参画というと、女性の活躍推進と捉えられがちでありますが、育児や介護は男性自衛官の理解と参加が必要であり、働き方改革は厳しい予算や人員においても空自が複雑化・高度化するその任務を遂行するために必要不可欠なものであります。

■援護業務について
(1)社会的背景等
 ここ数年来の景気回復により完全失業率は漸減しております。一方で、任期満了隊員の再就職年齢である20歳台後半及び定年退職者の再就職年齢である50歳台の有効求人倍率は漸増傾向にあるものの、他の年代に比べ低い状況となっております。
 更に平成15年度以降の国家公務員制度改革等により、例えば平成15年であれば、1佐(一)の退職金が約3、800万円(例)であったものが、現在では約3、000万円と大幅に低減しております。
(2)年金受給開始時期の変化に伴う対応
 年金受給開始時期が後ろ倒しになったことで、退職者一人当たりの企業在職期間が長くなることから、再就職先を新規に大幅開拓することが必須です。会社在職のOBの活躍が、新人(?)退職者の援護につながりますので、ご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
(3)操縦者の割愛等について
 一時期途切れていた民間航空会社への割愛等ですが、平成26年以降は再開し、空自操縦者のLCC等への割愛等がなされています。いわゆる若年における割愛に加え、定年者の民間航空会社への再就職も推進しているところであり、操縦者という限られた人的資源を官民双方に有用な形で養成・運用できるよう、関係機関等と連携しながら施策に取り組んでおります。
(4)あっせん防止等の規定について
 平成27年10月、自衛隊法が改正され、@あっせん規制(他の隊員等の再就職依頼・情報提供等の規制)、A求職活動規制(在職中の利害関係企業等への求職の規制)、B働きかけ規制(再就職者による依頼等の規制)が導入されました。
 若年定年制の自衛官の場合、再就職支援は援護業務として国に認められたものですが、文科省の事案を他山の石とし、空自としてはより一層、コンプライアンスに基づいた援護業務を実施していく所存であります。