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三沢航空科学館からの便り


                            H28.06.18

一式双発高等練習機の重要航空遺産認定を前にして

 つばさ会会員で、青森県立三沢航空科学館 渉外広報課 課長 引地勝博 氏より記事を頂きました。

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 平成24年9月5日に十和田湖から69年振りに引き揚げられたこの一式双発高等練習機(以下「双高練」という」)のこれまでの思いを記したい。













 私がこの双高練の話を大柳館長から初めて聞いたのは、平成18年に自衛隊を定年退職し航空科学館に再就職して2年が経過した頃だった。館長から「十和田湖に旧陸軍の飛行機が沈んでいるのだけれども、引き揚げに自衛隊の力を借りられないだろうか」というものだった。
 そしてそこには、当時16・17歳の少年飛行兵数名が一緒に沈んでいるということだった。

 私は元自衛官として飛行機に携わった者として、これは何とかしなければと心底思ったのである。今だから正直言うと、昔の見たことも聞いたこともない飛行機よりは、実は冷たい湖底の少年飛行兵を何とかしなければと考えたのだ。
 そんなもので、先ずは当時の目撃証言を得ようと、館長と十和田湖の漁組組合長や、当時救助された少年飛行兵を看病した看護婦、救助した民宿等に聞いて回ったのである。
 私は当時(今もそうですが)、館の広報マンとしての活動やイベント立案等で相当に忙しい身ではあったが、その合間に館長と十和田湖に通ったのである。しかしながら、途中から館の本来業務である広報や企画の仕事に忙殺され双高練の方には手が回らなくなり、時々首を突っ込む程度になっていた。そんなこともあって、この双高練の引き揚げには並々ならぬ関心を持っていた。そういった矢先、静岡の海洋調査会社ウインディネットワ−ク社が、とある作業中に湖底57mにある双高練の写真撮影に成功したのである。
 深さが57mということで、館長は青森県航空協会の会長として間髪を入れずに引き揚げを計画、平成23年3月に第一回目の引き揚げにチャレンジした。しかしながら引き揚げベルトが機体に食い込むなどして、湖底からの機体離脱ができずに引き揚げを断念、翌年の8月24日から第二回目の引き揚げにチャレンジし、9月4日に機体の湖底からの離脱に成功、翌9月5日に午前に両エンジンと尾翼、タイや車輪を、午後に胴体と主翼、操縦席を引き揚げた。直ちに、青森マリ−ナへ搬入し徹底的に洗浄され、その後、航空科学館に搬入され展示のための諸準備を完了し、その年の平成24年11月1日から本館格納庫特設展示場において、映画使用の原寸大零戦と共に展示開始した。












 展示開始当初は、旧陸軍機であることの物珍しさも手伝い、メデイアの取材も多く短期間で多くの見学者を得たが、次第にその熱も冷め徐々に見学者が減ってきた時に、見学者から「胴体の横に翼を平行に並べての展示では飛行機本来のイメ−ジが湧かないとの指摘を受け、大柳館長の決断を得て翼を胴体に戻すことを決定。翌年平成25年6月に展示を一時中断し胴体と翼を接合したのである。このことが多くのメデイア取り上げられ展示開始を報復させるような見学者で賑わいをみせた。それ以降コンスタントに来場者数を重ね、今年の3月19日に記念すべき10万人を達成した。












 それに大きく貢献したのは、この双高練の持つ魅力や話題性はあるものの、何といってもこの飛行機を引き揚げた80歳とは思えない、大柳館長の精力的な執筆活動や、メデイアの露出が功を奏したのは言うまでもない。それと相俟って毎土日祝日に、そんな館長の意図を体した私の1時間以上にも亘る懇切丁寧な説明が、或いは受けていたのかも知れない。何れにしても、この平成の世になって奇跡的に69年の時を経て十和田湖から引き揚げられたこの飛行機は、青森県のというよりは、日本国の宝であることに間違いはないのである。そんな宝を扱っているのだという気概を持って、飽きさせないような説明に邁進し接して行きたいと思う。
  
 今回そんな思い入れの強い飛行機が、日本航空協会から重要航空遺産として7月2日に認定を受けることはこれ以上のない喜びであり、保存する使命感に燃え、展示することに誇りを持って後世に引き継ぎたい。



                        (記事・画像:引地 勝博 様)

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 引地OB、ご投稿、有り難うございました。
 なお、三沢航空科学館のホームページは、こちら

              

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