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つばさ会は航空自衛隊の諸行事・諸活動への協力・支援等を行う空自OB組織です。

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27年度韓国訪問に参加して


                            H27.10.14

 27年度韓国訪問に参加して

                   理事 中島 邦祐

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 つばさ会の27年度主要事業の一つである、韓国空軍戦友会との交流のため、9月29日(火)から10月2日(金)までの3泊4日の日程で韓国を訪問した。本交流事業は、2004年に開始され、今年で11年目、今回が6回目の訪韓である。吉田正新会長を団長とする訪韓団(9名)は、韓国空軍戦友会の招待を受け、韓国の国軍記念日行事に参列するとともに、首都ソウルの防空を担う第10戦闘飛行団(水原:スウォン)の見学等を行った。
 韓国空軍戦友会の関係者には、訪韓計画の調整段階から真摯な対応を頂くと共に、実施段階においても、朴春澤(パク・チュンテク)会長自らが、つばさ会訪韓団と行動を共にされるなど厚いもてなしを受けた。さらに、今回の訪韓が円滑に運んだのは、在韓国防衛駐在官 對馬強介 1等空佐の綿密な調整のお蔭であり、本年7月着任後の間もない時期にも関わらず、多大なご支援、ご協力を頂いた對馬武官に、この紙面をお借りして深く感謝申し上げる次第です。

1 国軍記念日行事等
(1) 記念式典
    今年の記念行事は、10月1日(木)、韓国中部の大田(テジョン)市にある陸海空軍本部が所在する鶏龍台(ケリョンデ)で実施された。式典は当初、屋外のグランドで実施される予定であったが、10月1日が荒天予報であったため、屋内での行事とすることが2日前に決定された。式典当日は、予報にたがわず朝から大雨となり、屋内での実施となった関係上、式典規模・内容は共に縮小される結果となった。
   式典は、朴槿恵大統領が到着し、栄誉礼、黙祷の後、陸海空軍の個人優秀者及び優秀部隊に対する表彰が実施された。引き続く朴大統領の訓示では、各軍部隊指揮官は北朝鮮の如何なる挑発に対しても対応できる態勢を整えると共に、周辺の安全保障環境の変化にも応ずることのできる強い軍の育成を願う旨述べられた。
   屋外での実施であれば、このあと、巡閲、観閲行進及び韓国空軍の曲技飛行チームであるブラックイーグルスを含む観閲飛行が実施されたはずであるが、天候により観覧できなかったのは残念であった。

   記念式典の後、レセプションホールに場所を変え、大統領主催記念レセプションが行われた。大統領、国防部長官、合同参謀本部議長、陸・海・空軍参謀総長及び各軍の主要指揮官に加え、在韓米軍司令官 スカパロッテイー米陸軍大将がメインテーブルにつき、その他の多くの内外来賓の臨席のもと、レセプションは和やかな雰囲気で行われた。

(2) 空軍本部訪問
 レセプション終了後、空軍参謀本部を訪問した。吉田会長以下のつばさ会訪韓団に対し、お忙しいなか鄭景斗(チョン・キョンドゥ)空軍参謀総長が対応された。
 参謀総長からは、吉田会長以下の空軍本部訪問を歓迎する旨のお言葉を頂くと共に、懇談にも和やかに応じて頂いた。

2 部隊研修
  訪韓2日目の9月30日(水)、ソウルの南に隣接する水原市にある水原基地第10戦闘飛行団を訪問した。第10戦闘飛行団は、1951年8月に泗川(サチョン)基地(釜山の西側に位置する)で創設され、1954年10月に水原基地に移動した。3個飛行隊があり、機種はKF―5である。
  水原基地は、北朝鮮まで最短約40NMに位置し、首都ソウル防空の最前線基地として、事態対応における対処時間が非常に少ないなかで、即応態勢を維持している。また、基地周辺の都市化が進んでおり、飛行環境の悪さに加え、騒音苦情等の周辺対策にも頭を悩ましているとのことである。

3 史跡等研修
(1) 烏頭山統一展望台
    本展望台は、ソウル北西部の玻州(パジュ)市に位置し、北朝鮮区域を望むことができる。ここは、民間人統制区域にある韓国軍管理下の都羅展望台とは異なり、民間人が事前許可なしに自由に訪れることができる。
    展望台は、漢江(ハンガン)と臨津江(イムジンガン)の合流点を望む標高118メートルの古代城跡に建てられており、北朝鮮の宣伝村や開城(ケソン)工業団地などを望むことができる。この日も、多くの韓国人観光客が訪れていた。私ごとながら、久しぶりに訪れてみて、以前はなかった開城工業団地の近代的な建物群が印象的だった。この団地は、韓国の資本と北朝鮮の労働力により運営されているが、南北間でトラブルが発生する度に、団地の運営が停止・開始を繰り返している。

(2) 臨津閣(イムジンカク)及び自由の橋
    臨津閣はパジュ市に位置し、北朝鮮との間の軍事境界線付近を見渡すことのできる展望台である。民間人統制区域外にあり一般市民が特別な手続きなしに、北朝鮮に最も近づける地でもある。そのため、離散家族が北朝鮮にいる家族を思って訪れる場所にもなっている。また、臨津閣は、北朝鮮の体制非難を行う民間団体が、ビラを乗せたバルーンを北朝鮮に向かって放つ場所の一つでもあり、メディア等でも度々取り上げられる場所でもある。周辺は、以前に比べ美しく整備されており、観光地化しているとの印象を受けた。
    自由の橋は、臨津閣の近くにある鉄橋である。もともとは、京城(ソウル)と平壌(ピョンヤン)を結ぶ京義線の鉄道橋として、日本により架けられた鉄橋である。
    朝鮮戦争時、北朝鮮の爆撃により崩落したが、1953年の休戦協定締結後、道路として修復され、北朝鮮に捕えられた捕虜約1万3000人がこの橋を渡って帰還した。北から南に帰還する兵士が、口々に「自由万歳」と叫んだことから「自由の橋」の名で呼ばれるようになった。2000年から京義線の連結事業が始まり、再び鉄道橋として作り変えられ2001年に京義線は開通した。現在は、開城工業団地への人員・物資輸送のための重要な橋となっている。

4 歓迎晩餐会及び送別朝食会
  3日目の10月1日(木)夜、戦友会会長主催の晩餐会が、空軍会館で盛大に行われた。朴会長以下5名の空軍参謀総長経験者及び4名の在京空軍武官経験者を含む総勢26名の戦友会会員の方々からの歓迎を受けた。
  朴会長からの挨拶では、吉田会長の新会長就任へ祝意と昨年戦友会が訪日した際につばさ会から頂いた歓待への謝意が述べられた。また、両会の相互訪問が11年目となり成果が拡大していることや、最近若干の不具合状況は見られるものの我々の交流が、両空軍のみならず両国間の関係改善に役立つことを望む旨述べられた。
  これに対し吉田会長からは、相互交流を発展させていく方向性に賛同されるとともに、次回の交流からは個人的なコミュ二ケーションを深めるための方策について検討したい旨の提案がなされ、戦友会長も同意された。
  4日目最終日は、戦友会長主催送別朝食会が空軍会館で行われ、訪韓期間中の出来事などについて和やかに歓談された。

5 感 想
  最近の日韓関係全般は、過去の良好だった時期と比べれば、必ずしも順調とは言い難い面がある。しかし、元来、自衛隊と韓国軍、特に航空自衛隊と韓国空軍は、良好な関係を維持してきたし、現在も同様な関係を保っている。一部の要因により、現役間の交流が滞ってはいるが、このような時期こそ、両組織のOBであるつばさ会と空軍戦友会の交流が、相互理解の上で大変重要であると思う。今回のつばさ会訪韓団のメンバーは、会長以下全員がこのような思いを胸に訪韓し、戦友会のメンバーと交流を通じてその思いを共有することができたものと確信する。



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中島 邦祐 理事