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  今日の藤川 壽夫



8月12日(日)
はじめに
 6月15日から8月3日の48日間に亘る米国行脚も漸く終わりました。
 これもひとえに家族・友人・先輩後輩並びにOB関係各位のご支援・ご協力が無ければ 到底達成出来るものではなかったと改めて実感しております。
 やや長文にわたりますが今回の行脚を覚書的に記し、締めくくりにしたいと思います。
1 計画段階
  当初、バイクでの米国走行は大陸横断ツアーを申し込んでおりましたが、最小催行人員に達せず断念せざるを得ないという状況から、ルート66完走ツアーに切り替え、これも最小催行人員に達せず計画を断念!ならば単独でルート66をということで再企画、ロスからシカゴまでをレンタルのバイクで、爾後グレイハウンドバスを利用してバックパッカーの旅に切り替えた次第である。
  それで構想を以下のとおりに定め基本計画を策定しました。
  結論的にいえば、ひとり身軽で安く安全第一!をモットーにした旅です!
  ※計画策定の基本は、作戦計画に準じて策定して行けば簡単に作成できる。

(1)基本方針
 ア バイクはレンタルとし、走行経路はロスーシカゴ、18日間、爾後は単独バス移動とし、径路は東海岸ー南海岸ーロス、その後ハワイ経由で2ヶ月を基準とする。
 イ 所要全経費は、1万円/日を基準とし、総経費100万円以内を見積もる。
 ウ 実施期間は、夏季とし、装備品及び携行品の最小限化を図る。
(2)指導要領
 ア バイク旅行中はモテルを、それ以外はユースホステルを可能な限り多用する。
 イ 不測事態対処に対する対応を万全なものにする。
 ウ あらゆる手段による情報収集及び連絡通報態勢を確立する。
 エ 携行品は必要少々限度とし、48リットル収容可能なバックパック1個に収容する。

2 基本計画
(1)バイクレンタル先は、EAGLE RIDERとし、不測事態対応のため日本語サービスを付加
(2)バイクは、現有のハーレーFXDL系とし、各種保険は、最大限度補償を付加
(3)バイク装備品は夏季用とし軽量化を最重要評価要素とする。
(4)バイク旅行後の不用品等を自宅に返送する。
(5)バイク返却後の主移動手段をグレイハウンドバス及び鉄道とする。
(6)辞書は不携帯とする。
 以上を基に情報収集を開始、作戦計画の項目に準じて細部計画を策定して行った。 この段階でレンタル会社からツアー最小催行人員に満たないとの連絡を受け、急遽単独バイクツーリングに切り替えた訳である(これがスタートラインかな?)。
 ロサンゼルスからニューヨークまでのバイク横断を計画していたが、バイク返却先をシカゴに指定されたので止むを得ず米国完全横断を断念し、シカゴからはバス利用の旅に変更したものである。

3 実行段階
  計画するのは極めて簡単だが、実施段階になると5W1Hの全てがその場、その時点で千変万化する。
  地図の上にコースを採りA地点からB地点までの距離を時速○○MILES/Hで走れば走行距離が出るが、バイクもバスも生き物、燃料やオイルを補給したり、天象気象の変化や周囲の環境の変化に即応しなければならず、まして自己の心身の状態とマッチングして運転しなければならない。
  運転環境及び状況の変化に際し、その瞬間で最良の方策を案出し決心して行動に移すだけ(状況判断)。
  加えてここは異国の地+日本人は皆無の世界なのである、何が起こるか分からない?
  ま、…モノは考えようで流れに身を任せれば何とかなるものである。
  初めからしゃっちょこばって構えるよりも「何とかならあな!?」の方がかえって良い結果をこの旅でも何度となく経験した。
  翻って言えば計画は余裕を持った大まかなものの方が、状況に併せて臨機応変に対応できる。
  どんなに計画の細部を練り上げてみたところで、それがそのまま適用できるという場面は絶対に無い!ということである。
  が、細部計画を積み上げておくことによる精神的安心感及び不測事態対処への活用には期待できる。

4 気付いたまま(教訓と反省)
(1)渡米準備
  基本的にパスポート、クレジットカード、現金少々+下着だけで外国へは行ける。 その旅の目的及び訪問国の環境によって多少の衣類の選択だけでよい。 小生の場合は、バイクツーリングに必要な手袋、上下及び頑丈なトレッキング用ブーツと下着+GPS、携帯電話、中華PAD、腕時計等でこれに移動用の軽装(Tシャツとハイキング用ズボン)だけで48リッターのバックパック1本を背負うだけであった。
  このバックパック1本は極めて有効であり、諸外国からユースホステルを利用している者の半数以上がバックパッカーであり、このスタイルで旅する者が多い。残りは移動用コロ付の大型のバッグ利用者であった。概してバックパッカー族は数日滞在、大型コロ付バッグは1週以上の滞在者が多かったように思う。
(2)バイクの経路選定
  ROUTE66をロサンゼルスからシカゴまで18日間、1日平均300-400MILES、MOTEL6利用で超簡単!
  MOTEL6は、シングルで$40-65が相場、大抵の場合は予約なしでOK!
(3)バイク返却後の移動経路と宿
  グレイハウンドバス全米30日間有効のDISCOVERY PASS(AMERI PASSともいう)$461格安を利用。
  しかし、これにはひとつ罠があった!
  その罠とは、格安だけに最低限のサービスしかないということであった。例えばネットで購入すればEXPRESSを優先的に利用できるが、アメリパスは余席があれば利用可能というものであった。
  これ以外にも+$1や+$5のPRORITY BOARDINGで座席指定を取れるが、アメリパスはその恩典は無い!
  疲れている時に次ぎのバスまで6時間も待つのは時間の無駄と体力の消耗だけであった。反面、バス利用者層の人々の生活の実態を細かく観察することができた。
  バス利用者は、長距離格安移動手段利用者の有色人種(黒→メキシコ系→東洋系→バックパッカー)が殆どで白人系はバックパッカーだけであった。
 勿論、小生は当初から何でも見てやろう体験しようとの趣旨だったのでバス利用に拘った。
  グレイハウンドのターミナルは、大抵がダウンタウンにあるが、中には郊外で夜間における治安が不十分なところもある。でもご安心、会社雇いのセキュリティポリスが拳銃を腰に一晩中ターミナル屋内外を監視しており、不安を感じたことは一度も無かった。
(4)航空券の手配・搭乗
  格安海外航空券の手配してくれる会社は山ほどあるが、実績及び小生の航空券が成田-ロサンゼルス-ハワイ-成田という経路を希望、搭乗日指定で48日間に亘る旅行期間であったためネット予約よりも窓口で直接予約する方が手っ取り早いと思い、HISに全てを依頼した。
  結局全経路をデルタ航空で移動することになった。
  空港における航空券の発券は、チケットカウンターでも可能だが、パスポートを航空会社毎のカウンター傍に備え付けられた自動発券機に差込み(又はスワイプといってスライドさせながら読み込ませること)、コンピューターの指示どうりの手順を実行すれば簡単に発券できるようになっている。
  パスポートの電子化で国際的に規格統一化が進み、自動発券が可能になってきたことによる。
  手荷物を預ける時は、航空券とパスポートとともに預ける荷物をカウンターに持ち込み、バゲージタグの半片を貰って税関の出国検査を受け搭乗ゲートに向かい搭乗手続きを経て搭乗する。
(5)PC/スマートフォンの使用
  空港内及び機内はフリーWiFiが使用できメール送受信可能である。
  グレイハウンドのターミナル及びバス内は、できる時とできない時がある。 一般的に、大都市のターミナル及びEXPRESSのバスはWiFiが可能である。その他、大都市内のPUBLIC FREE WIFIは利用できるし(StarBacks等)、便利である。
  MOTEL6は無料と$3~6/日の両方があった。
  中華PADを持参したがJAVAの画面表示を除き概ね初期の目的を達成した。 特に中華PAD(AndroidOS4.0)にインストールしたSKYPEはVIDEO・VOICE通話ともに大活躍であった。
  米国内ではPUBLIC WIFI網が整備されており、有料でも格安に設定されているため有効に活用できたのは大きな安心材料であったし、日々の紀行文とスナップをつばさ会担当理事に送信する作業も十分であった。
  更に、地点確認等はGoogleMapやGoogleEarthで簡単に下調べでき、その上2地点間を入れ込めば3D画像もシミュレートしてくれる優れものであった。 バイク&バスの旅に有効に活用したのは言うまでも無い。
(6)携帯電話等
   一番悩んだのが携帯電話であった!
   家族との連絡、旅行期間中の不測事態対処・レンタル会社への連絡調整及びWiFi無しの場合の宿の予約は  携帯無しではお手上げである。
  小生の場合は、米国で使えるSIMフリーの携帯を保有していたので、現地でPREPAID SIMを買うだけでよいと気楽に考えていたが、そのPREPAID SIM CARDが何処の店にも販売はしていない。 日本同様、犯罪に使用される場合が多く、積極的な販売は自粛しているか、あるいは中止しているようであり、現にハワイでも見掛けることは無かった。
   現地で格安($70-100)プリペイド携帯電話を購入することもできるが、持参した携帯を活かそうとSIMを探していた矢先にロサンゼルスのリトル東京のある店に格安携帯電話のSIM取り扱いの看板を見つけ、これを使用することにした。
   米国での周波数帯が使えるSIMフリーの携帯であれば、www.airvoicewireless.comのシムカードは即使える。尤もアクティベートは店の人がやってくれるし、クレジットカード+PC環境があれば自分でもできる。通常は30日間だが小生の場合は期間無制限のものを選び、48日間の旅行期間中これ1本で過ごした。
  携帯電話の購入形態は次のとおりですが検討してみて下さい。
ア 日本での携帯をローミング利用で外国で使用する(帰国して精算時に眼の玉が飛び出るかも?)。
イ 日本(又は外国)で外国通話用の携帯をリースする。
ウ 外国の周波数帯対応の携帯を持参し、日本又は外国でPREPAID SIM CARDを入れ替える(小生の場合は外国で購入$100。日本へのかけ方は、1-888-944-XXXXその後81-日本の番号)。
エ 外国で格安の携帯本体+SIM CARD(期間及び金額で選べる)を購入し、これにクレジットカードで必要な金額を事前にチャージするか、爾後の精算払いにするかのどちらかを選ぶ(メールと通話だけなら③よりも格安かも・・・?)。
オ エで購入した携帯に別の会社のPREPAID CARD($10単位で購入、日本への携帯電話への通話は約50分程度?・・・忘れた?日本への掛け方は、1-800-204-18XXその後10桁のPIN入力しその後に011-81-日本の番号)も格安である(これから購入という方にはお勧め!)。 ※韓国訪問時に、世界周波数帯対応のSIM FREEの格安携帯を購入する手もあり目下検討中!!
(7)宿
  宿は、地点間のシャワー&休息所と衣服の洗濯というだけのモノだけでよかったのでホテルという設備の整ったところに泊まったのはニューオーリンズのホテルと鼻風邪を引いて二日間ロスのリトル東京の川田ホテルだけでMOTEL6とYHが主な宿だったことになる。
ア ユースホステル($30-40)
  日本から外国のユースを予約する場合は、日本ユースホステル協会のHPからの予約が可能だ。
  ただし、協会経由だとHI-CHICAGOとか都市名にHI-(Hostering International)が冠されたYHしか予約できない。これらHI-CHICAGO等のYHは大都市しかないため、地方でのYHを利用するときはhttp://www.hostelworld.com/とかhttp://www.hostels.com/やhttp://www.hostelsclub.com/index-jp.htmlを活用した。  これ以外にもその街のHPにアクセスし、GUEST HOUSEやB&Bの情報も入手した。
  特筆すべきは、HI-CHICAGOのYHでホテル並みの設備を有しかつ何もかもが清潔で同じ部屋に6-10人もいなければこんなに格安で快適なところは無い!加えて朝食は、FREE BRECKFASTでワッフルやベーグル、オレンジジュースやミルク、りんご等がタダで食べることができ、WIFIも無料であった。
  ロサンゼルスではハリウッドのど真ん中にあるHOLLYWOOD YOUTH HOSTELを利用したが、人気のYHだけあって、毎日いろいろなメニューで客を楽しませるよう工夫がしてあり、朝食はフリー、曜日によってはスパゲティや、ビールパーティが無料で深夜までドンちゃん騒ぎが続くが、ドアを閉めると音は聞こえない!
  今時、朝飯付で$30の宿など有り得ない!
  学生が夏季休暇中で9月の新学期までYHの盛況は続き、それ以後は比較的空いてくる。
  また、YHには年配の男女も結構利用しており、施設内のキチンや鍋、皿を使って食事の材料を本格的に料理しているグループもあり、手造りの旅を満喫しているように感じた。
イ MOTEL($40-65)
  日本のモーテルとは大いに異なる。 車等で移動する旅人の宿であり、大抵がハイウェイのインターチェンジの出口には必ず何軒かのMOTELがあり、レストランやガソリンスタンドがある。 殆どのMOTELが全米チェーンとなっており、サービスもほぼ同じ程度に規格統一化されている。 シングルベッドといっても日本のダブルベッドより大きく、設備も整っており心身ともに疲れを癒すことができた。 WiFiも無料と有料があるがそれでも$3-6/日くらいである。 エアコンは、ギンギンに冷えているので調節して快眠できるように設定し直す必要がある。 大抵の場合、コインランドリー(各$2程度)で洗濯と乾燥機が備えられ大いに役立った。
  また、製氷機があり洗面台に水と氷を張り、これに缶ビールをぶち込み、シャワー後にギンギンに冷えたビールをキューっと一杯やれば、その日の疲れは雲散霧消した。
(8)食事
  バイク移動中の食欲は細くなる。これはハーレー特有のエンジンの振動とアメリカのハイウェイのメンテの悪さによるものと判断している。
  都合の良いことに、インターの出入り口は、食・宿・ガソリン全てが揃っており大変便利にできている。
 食欲が無い時でも最低限、フルーツ、野菜、ミルクかヨーグルト、これに夜はソーセージと缶ビール+バーボンで中華PADのキーを叩いたのである。
 バス旅行中は、YHで朝飯は賄えたので昼夜だけ準備すれば良く、フルーツ、野菜、ミルクかヨーグルトこれに夜はソーセージと缶ビール+バーボンの変わりのないパターンを繰り返した。
 特に和食を無性に食べたいと思ったことは無く、リトル東京でしゃぶしゃぶと寿司を食した以外はラーメンを食べただけに過ぎない。
(9)水の補給
  兎に角、暑かった!
  が・・・木陰や日陰の中では涼しい!
  バイクでもバスの中でも発汗作用は活発で、いつも1リッターのミネラルウォーターを2-3本は飲んでいた勘定になる。
  余りにも暑過ぎて携行した水2本分をヘルメットの中と頭からザブザブ掛けてバイクで走っても、ものの30分もすれば完全に乾き切るというそれくらい湿度の低い砂漠走行は体力消耗が激しかった。
(10)大都市の足
   ハイウェイに入り暫く走るとそこは荒涼たる砂漠か又は緑深い森の中の二本の道路だけである。
   北海道の新得から根釧平野に掛けての一本道が良く比較にされるが、そんなもんではない!スロットルをある速度にセットしてから丸々1時間以上も一本道が続く!それも地形の起伏をそのままにアップダウンする一本道が地平線まで続いている。
   サンタフェから東に進路を採ると鉄道とハイウェイが平行に走るところが何回も出てくる。
   そうです、街と街の距離が50MILES以上というのはザラにあるのです。
   その町のひとつが大都会であったりします。それらの大都会はダウンタウンを中心に地下鉄とバスが蜘蛛の巣のように張り巡らされて市民生活を便利にしておりますが、その枠外から一歩外に出るとそこはまた砂漠か森なのです。
   隣の街まで砂漠や森を越えて行くには車しか移動手段が無いのです。
(11)道路事情等
 ア ハイウェイと一般の道路
   いずれも財政難のためかメンテナンスは良くないが、幹線といわれるハイウェイは比較的良い方である。しかしながら大型トラックのタイヤバーストの破片が道路の隅に散らばっており、ほったらかしになっている。
   また、大都市近郊の幹線ハイウェイは、数ドル程度であるが有料化されており、その分だけメンテは良くなっている。
   一般道路のメンテは、自治体管轄になっているのかどうかはよく分からないが地域差が激しい。
   田舎の道は、未舗装のところもあり映画で出てくるような車が巻き上げる砂埃が一陣の風に颯爽と走り去る場面が度々見掛けた。
   自らも道を誤り、田舎道に突っ込んだ時これを体験した。
イ ガソリンスタンド
  無鉛ガソリンガロンあたり4ドル前後の売値である。日本のガソリンが税金で高値になっているのに比し、米国での売値は安いと実感した。また車が生活必需品なのでガソリン代が高くなると政府批判が強烈になるというお国柄でもあり、そうそうは高く売値を付けられない事情があるのも事実ではある。
   ガソリンスタンドは、大抵のところが日本のコンビニ程度の品揃えをし、軽食を提供できるほどになっている。中にはスーパーマーケット並みに豊富な品揃えもあり、こういった店では本格的なレストランが併設されているか又は隣接し商品陳列も充実しており客の選択肢が多いためお客さんの数も多く、小さな町では町の交流場所的な雰囲気もありアットホームな印象を受けた。その分だけ郷土意識は強いが、かといってよそ者を受け入れないというのではなく、米国一般のおおらかさ親しみやすさが感じられた。
(12)英会話能力
 ア 英会話その1
   小生の英会話能力は、英語圏で初歩的な挨拶ができる程度であり語彙もそんなに多くは無い。言い換えれば中学生レベル程度とお考え戴ければお分かりになるであろう。会話の基本は、意思の疎通でありその手段としての言葉を声を出して相手に伝えるだけのことである。伝わらない時はどうするかが問題であって、その時の対応方法は無限にある。
   先ず、理解できない部分が何処か?会話は相互の言葉のやり取りであるから、そのシチュエーションには連続性がある。 その連続性の中でのヒントとなる言葉が理解できない場合が殆どであった過去の経験から、その言葉の意味を概ね推測できた場合にはそのまま会話を継続することはできた。 だが、ヒントとなる言葉も連続性から離れた言葉も出て来て理解できない場合は相手に聞き返す、それも相手に対して「会話しているのは英語を余り喋れない外国人と認識させながら聞く」のである。 そのコツはユックリ喋りかけることである。大抵の場合、相手はこれで気付いてくれる。 気付いてくれない時には、ハッキリと! "I’m not native, Would you speak more slowly please! " これで大抵はOK!これでも駄目な時がある・・・・、ここからが本当の活きた英会話である。
   紙にメモを書いて相手に見せる・・これで70%用は足せる。
   身振り手振り+ありったけの語彙で自分の意思を一方的に喋る・・・こうすることによって相手も必死に我が方が何を言っているのかを真剣に聞いてくれる、そうするとお互いに分かり合おうとする努力が生まれ、何らかの答えを見出せる・・・少々時間が掛かり荒っぽいようだがこのやり方で75-80%は理解できる。
   残り20-25%は理解できない・・・何か?・・・・訛りである! こんなことがあった・・・・・。 シカゴのグレイハウンドターミナルでバスの発車時刻が間もなくという時に、黒人の受付嬢にゲートを確認したところボストン行きはゲート2だという。 ゲート2にはバスは来ていないし、配車スタッフはゲート15だといっている、どっちだ?と聞くと、まもなくゲート2バスが来る間違いはないからそこで待てという。これらの会話が隣の受付嬢との会話の中で早口で黒人特有の巻き舌の含み声で喋るものだから、何処から何処までが小生に対する回答なのか判然としない? そもそも小生は客で、同僚と私的な会話を交わすとは無礼千万ではないか?!と思いながら最後の手段と黒人の男性配車係りにその旨を訴えたら、即座に「あのバスだー、アレに乗れ!アレだ、アレ!」とバスまで連れて行かれ押し込まれるように乗車し事無きを得たのである。
   この時点以降、黒人女性受付嬢には余り良い印象を持っていないし、残念だが・・・・何処の黒人受付嬢も大概はこの手合いであった!?   ※プロ根性と英語 もうひとつ特筆しておくべきことを想い出した。
    ニューオーリンズでの出来事である。アトランタから電話でニューオーリンズのホテルを予約した。予約を依頼した相手が外国人であることを察してか、ユックリしたボストングリッシュでたった一発で完璧に用件を達成できた。
   で・・・、当日宿に着いて手続きをしたら、昨日の予約の件を覚えていてくれてホテルの設備や使用方法等をこれまた昨日同様のユックリした話し方でブリーフィングして貰った。ついでに町の中でのフリーマップとお勧めの店の紹介等も頼んだが、これが実に手際良くこれが本当のプロだなと感じ入った次第であった(当然のことなんだが・・・南部では未だ差別意識の残っているところも多い)。
   もう一つはエルパソ郊外にある歴史的建築物を見学した時の30代前半の管理人兼ガイドの対応である。カウボーイハットを被った執事といった風の礼儀正しい好青年で、約40分間1対1の案内を受けた。 西部にあって英国風発音でユックリと話す様は、まさに西部劇の劇中にいるような錯覚を覚えた。
   これら二人の対応を観察していると、普段の仕事や生活の中で自分の果たす役割をキチンと整理・理解しし、それを実行しているだけであるが、それが機能的で洗練されていて実に鮮やかであった。
  国際貢献等の任務拡大や日米共同訓練の実を挙げる意味でも今後の航空自衛隊の英会話能力の向上は不可欠であり、自らの創意工夫とともに教育への投資、なかんずく英語を母国語とする教官の大量採用による実践教育の場を拡大する必要があると考える。
  今回、小生の隠れた目標の一つに、「全て自分一人で問題を解決し処理して行く。」があって、辞書を携行しなかった理由はここのある。 今までに会話で分からなかった単語等はいくつもあるが、会話終了後に想い出そうとしても思い出すことはできなかった。また、想い出しはしてもどのような会話の流れの中で出て来たのかが分からない。 ならば荷物の軽量化に併せ、今まで辞書に頼ろうとしていた自分の弱さも断ち切ることで辞書を捨てたのである。 これは正解であった。
   何故なら進行中の会話を中断させずに進めて行くには、今、理解できない又は分からない単語の意味を咀嚼するしかないからである。
   で・・・・分からないところを聞く!理解できなければ別の表現でとお願いする。大体、この調子で2回目の回答で全容は掴めなくても半分以上は理解できる。そうです、分からなければ聞く!これを実行すればよいだけの話なのです。英語を話す人も小生も、もともとは外国人同士が話をしているのですからお互いに理解しようと話に耳を傾けてくれるのは世界共通のことだと思っている。
イ 英会話その2
  「Excuse me !」・・・・、米国生活のあらゆる場面で聴く言葉だ! 実に、生活の一部分ではないかと思われるくらいに軽く使われる言葉である。 日本語の「済みません!」と同義語と思って間違いない。 電車を降りる時に通り抜けようとする時、自分の存在を相手に知らしめようとする時、相手に迷惑を掛けないようにする時等、実に気軽に連発している。 実生活で一番多く使われている言葉はまさしく「Excuse me!」でした。 逆に言えば、これこそがアメリカ民主主義を象徴するような言葉ではなかろうか? 即ち、事前に相手に一応の注意を喚起し、トラブルを生じさせないようにするための生活の知恵ではなかろうかと?! 「I’m sorry !」…、たった1回だけ聞いた。 ホテルの壁際を小走りに走ってきた女性が廊下の曲がり角で、出会いがしらに他の人にぶつかりそうになった。件の女性、すかさず「I’m sorry !  日本人の大抵は、「Excuse me !」で済ませるところを「I’m sorry !」と言う人が多い、気を付けよう。  
ウ 英会話その3
  その他、日常使われる言葉は次のとおりである。
  「Hi !」、「Hou are you doing ?」及び「Nice to meet you !」等である。 挨拶の呪文・潤滑油みたいなもので、単にそれだけで眼と眼を交わすだけに終わったり、そこから会話に入って行く場面が多い。 
(13)善意
   今回の失敗談は数多くあった。
   その中でも特筆モノは、バイク走行中のGPS脱落事件であろう。
   走行中に突然悪路に遭遇し、ガチャンと音がしてハンドルに装着していたGPSが眼の前から消えていった。もともと凸凹の悪路だったことと交差点が直ぐだったので低速走行中であり、近くにバイクを止めて回収のためにその地点に向かってとんぼ返り。 無事にGPSを回収しホッとしてバイクに取付作業をしてたところ、黒人の大男が大声で何か黒いモノを 振りかざしながら近づいてきた。
   何だろうなと思って件の男性の手に握られた黒いモノを見た時、「アーーッツ、俺の財布だ!」  腰のポーチのジッパーは少し開いていたのであろう? 走る度に更にジッパーが開きGPSを回収した途端にポーチから財布(現金80ドル程度とクレジットカード)が飛び出してしまったのである。
   黒人男性いわく、交通量の激しい2車線の道路でバイクを停めて何かを拾おうとする危険な行為をする男を近くで道路を修理していた市の土木監督官がたまたま見ていてくれたのであった。その上、小生のポーチから飛び出した財布を拾い上げ、走って来て手渡してくれたのである。
   もし、この財布が無かったら爾後のクレジットカードの失効手続き等や精神的なショックを考えるとバイクの旅どころではなかったろうと思う。
   咄嗟にドル紙幣をお礼に渡そうとしたが、受け取っては貰えなかった。
   彼の頭からは大粒の汗がブツブツと吹き出ている…、その彼が現場に戻るために最後に言ってくれた言葉「Take care !」……、小生にはまるでこの黒人の大男が神様に見えていた!
   この他、真夏の暑い陽射しの中でカメラを構えていた時に、品の良い白人の老夫妻からワザワザ車を停めてスナップを撮ってくれたり、公務中の警官がパトカーを止めてシャッターを押してくれたり、田舎道で地図を見てGPSに入力しているところを巡回中の警官に尋問され、「実はロストポジションしている、ここからこの街へ行きたい…」と言うと、すかさず「Follow me ! I’ll take you there.」でパトカーにより時速100MILES(役160km)でインターチェンジまで先導して貰ったり数々の善意を頂きました。
   これ以外にもユースホステルのルームメイト・スタッフ、バスターミナルの配車係、行きずりに道を尋ねた老若男女、さらにモーテルの受付やレストラン、ガソリンスタンドの店員等々みんなが好意的で親日的な対応を示してくれた。
   こういったこともあって、小生の米国人への観方は大きく性善説に変わって行った。
   ラッキーだっただけだよと言う御仁もおられるかも知れないが、現役時代からこういったことが続くと性悪説は小生には無縁であると信じざるを得ない!!

    5 おわりに
  今回の米国ルート66バイク単独行に引き続く米国東海岸~南海岸~ロサンゼルス~ハワイのひとり旅は、まもなく68年となる人生を通じて初めての自前の旅でありました。
  組織の中にいると、各部署が痒い所まで手が届くように至れり尽くせり各種手続きをやって貰えますが、今回はそれを全て自分でやらねばなりません。
  それもバイクでの単独行やグレイハウンドバス利用も初めてづくしである。   そんな中での準備・計画・実行でありましたが、出先での天候及び健康状態にも恵まれ無事に目的を達成して帰国できました。
  これもひとえに家族・友人・先輩後輩並びにOB関係各位のご支援・ご協力が無ければ到底達成出来るものではないと改めて感謝しております。
  加えて旅行中の現地の方々の暖かい善意に支えられた心の旅でもありました。
  人生は、大きな長い旅です。
  次なる未知への旅に向かってさらに前進して参りたいと思っております。 有難うございました。