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    ―つばさ川柳 願法みつる編 (133号) 

刀尽き矢も折れ脳のいくさごと     岩崎 篤子
忍び寄る呆けに用心してみるが
社会人門出の春に孫もおり       上田 将子
大人びた口調も出来て社会人
学友と枕投げしたその昔        木村  泉
浜松を基点幾度の北南
銘柄で飲まされそんな気にもなり    佐原 利幸
いい湯だが少し気になる光熱費
点眼がうまく当たらず顔濡らす     鈴木  至
酔うほどに気にもかけずに渡し箸
身の丈に合った幸せ心地良い      末田 洋一
枝豆は今やエダマメ酒の席
体調のバロメーターは酒に在り     田所  健
衝撃の知らせ残して友は逝き
言うことを聞かぬスマホが妻に似る   谷井 修平
来てもよし帰ってもよし孫一人
怖い漏れ汚染水より諸情報       中井  極
人道の支援が敵を生む皮肉
天命と悟ったようでただの人      濱田 喜己
日薬の忘れた分をそっと飲む
無事という幸せがあり灯が温い     蜂巣  徹
一目をひとめと読んで首相並み
長寿命だけど目と歯は悪くなり     藤沼 智弘
白鵬も大鵬までの器の差
老いの春ひねもすうつらうつらかな   宝納 徳一
総理まで仲間入りする野次怒号
年齢に比例テレビを観る時間      堀内今一歩
ユニクロを街行く押し上げる
正月の食べ過ぎ今は食細り       蒔苗八十八
名誉なく地位もないけど清く生き
目立ちたい自己責任は無責任      若松 靖夫
草食にフラストレーション女子の会
ブルドッグ鏡の顔を信じない      願法みつる
無いものは無い脳味噌のありったけ   

課題  『旅 行』      みつる選
  予約旅犬の都合で取り消され    蜂巣  徹
  金婚の思い出探す旅に出る     田所  健
  フルムーン古いテープを巻き戻す  末田 洋一
  わが旅も終わり近いか喜寿傘寿   中井  極
  還暦の思い出話旅のこと      上田 将子
  仕事なし気遣いなしの一人旅    若松 靖夫
  地図上に世界旅行の夢を馳せ    鈴木  至
  老いの夢釣り竿かつぐ一人旅    蒔苗八十八
  あてにしたジャンボ外れてミニの旅 佐原 利幸
  旅支度まだまだですと医者が言い  谷井 修平
  順番があってないのが次の旅    濱田 喜己
  居乍らに諸国漫遊テレビ連れ    宝納 徳一
  海外へ出掛けるときは命懸け    藤沼 智弘
秀 断捨離で三途の川の旅支度     岩崎 篤子
秀 旅をした遠い軌跡の地図なぞる   木村  泉
秀 音を聴くだけの鉄道ファンも居り  堀内今一歩
軸 晩成へ地獄極楽フルムーン     願法みつる

「自由句と課題句について」―5
課題句における選句について述べます。ごく一般的な姿、世界についてご披露します。
結論から先に言いますと、選は選者の勝手と言う事になります。そうです。選句に絶対的な基準はありません。まさに選者の川柳眼で自由に選択出来る特権なのです。しかしそこには当然ながら責任が伴います。恥ずかしくない選をすると言うことは、苦痛な作業であり、苦悩でもあります。選の善し悪しは、選者以外の柳人の客観的な目に曝される訳ですから。
新聞や雑誌の投句欄で掲載される句をご覧になって皆さんが感じられることが、即ち結果です。なんでこんな当たり前の句を掲載するのか、なんでこんな巫山戯た句を発表するのか・・という反応が出れば、その選は失敗です。しかし企業川柳や思想懸かった発表誌などでは、句の川柳的評価よりも企業イメージ高揚の為の句を選ぶ傾向がありますから、選者でも意に沿わないながら企業側に妥協することがあるようです。
それとは別に真面目な投句と真摯な選者の場合でも、
良く言われることですが、自信を持って投句した句が抜けず、反ってどうでも良かった句が抜ける・・と。そうなのです作者の思い入れの強い句は、案外選者の基準から外れやすいものです。
選者は自分の主観で選ぶとは言え、経験に照らして、選の結果が他人の目に曝されることを意識しています。そうであれば、当然無難な選を心がけます。十七音字の型やリズム、用語の適正さそして川柳らしい「うがち」や「かるみ」「おかしみ」そして人間性などを感得する句を選ぶことになります。単なる説明句であったり情景句や当たり前の句や個人句では、当然ながら没になるでしょう。(もう少し続けましょうか。)


次号課題は「留 守」。課題句二句と自由句は三句をご投稿下さい。締切日は五月末日です。