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           ―つばさ川柳127号 

お仕着せの憲法護る疑問形       藤沼 智弘
消費税上げる議員の身の削り
限界の暑さへ老いのギブアップ     宝納 徳一
生き延びてテレビに黙す終戦日
ドシャブリと片仮名で書く横なぐり   堀内今一歩
運送屋だけで引っ越す社宅村
噛み合わぬ歯車まわし傘寿過ぎ     蒔苗八十八
温暖化北の国でもゴーヤ植え
戦国は攻めに女郎が付いてくる     若松 靖夫
おのこにはにょしょうに勝る癒しなし   
徒然のニート草食パラサイト      岩崎 篤子
国守るもの皆老いて道遠し
朝顔もくたびれ果てた空の青      上田 将子
水遣りも日に二度三度癖になり
火花散るオリンピックの招致劇     木村  泉
横綱もチャンコの鍋で育てられ
蝉に蟻輪廻のカラス舞う野末      佐原 利幸
払暁の出勤で聴くラジオ便
この時代合点が行く家族葬       鈴木  至
つい見やる学力テストおらがくに   
失敗の話に寄ってくるすずめ      末田 洋一
しんらつな妻の助言がありがたい
二日酔いなるまで飲んで自信持つ    田所  健
八十路坂やがて迎える終の道
衆参の捩れが解けて箍外れ       中井  極
国防がやっと芽を吹くメロドラマ
アルバムをめくれば開く玉手箱     濱田 喜己
誇りなどかなぐり捨てて他国打つ
訃報聞くたび記念誌を開けてみる    蜂巣  徹
孫不在しめたと犬が膝に来る
大臣のヒゲは猫ほど役立たず      願法みつる
雑念がまだ断捨離の縁にいる

課題  『名 案』     みつる選

 トイレにてひょいと気が付き膝を打つ若松 靖夫
 正論も理外の徒には敵の論     鈴木  至
 亡き親と暮らしができる夢枕    濱田 喜己
 解決の名案探る夜長かな      蜂巣  徹
 名案も実行せねば持ち腐れ     藤沼 智弘
 名案は出たが実行難しい      木村  泉
 名案を早合点してほぞを噛む    田所  健
 キリギリス名案もなく冬はそこ   岩崎 篤子
 子供等の名案集め町おこし     蒔苗八十八
 名案も根回し足らず枝分かれ    佐原 利幸
 名案も金がないよと先送り     末田 洋一
 名案はないかと夢の中探る     上田 将子
秀 御逝去を転院という伝え方     堀内今一歩
秀 汚染漏れ止める案無く隠す案    中井  極
秀 一徹に世直し案を自画自賛     宝納 徳一
軸 宝くじ全部を当たりくじにする   願法みつる


 某誌に掲載の雑詠句及び課題句の例を紹介します。
本格川柳にも様々な表現があるものです。
「雑詠句」 
「分かっては呉れぬ男の耳の穴」・・・心象句ですね。具体的に耳の穴を詠っている訳ではありません。作者は女性でしょうが、その心は奈辺にあるのでしょうか。
「安らぎの芽を害虫が食い荒らす」・・・抽象句です。
安らぎの芽とはなんだろう。食い荒らす害虫とは現実のものなのか。読者が読み取る心情は全く自由です。
「野面往くみどりの風に頓死する」・・・下句が勝負か。
上句中句で問い掛けて下句で一刀両断。温和な情緒的場面を急展開させる作者の言いたいことは何でしょう。

「課題句:邪(よこしま)」
「子の無邪気家の秘密を言いふらす」・・・具象です。
一読了解の句である。しかし愉快であるとか困っているとかは言ってない。情景は読者の心のままに拡がる。
「決断へユダの心になってみる」・・・強烈な句ですね。
ユダの心とは二度と戻れぬ裏切への踏切だろうか。しかも裏切ったか否かは不明である。面白い修辞である。
「復興費打算の顔が寄って来る」・・・時事句である。果てしなく繰り返される災害の度に行政側と事業者の泥仕合が続く。狸や狢の陰に被災者の涙が涸れてゆく。


 次号課題は「漏れる」。課題句二句と自由句は三句をご投稿下さい。締切日は、十一月末日です。